外国人旅行者の誘客拡大へ、復興庁が「飛鳥Ⅱ」で事業説明会/大船渡(別写真あり)

▲ 台湾・台中市旅行組合の関係者らと意見交換も行った事業説明会=飛鳥Ⅱ

 復興庁岩手復興局による「岩手県を中心とした北東北インバウンド交流拡大モデル事業」の事業概要説明会は15日、大船渡市の大船渡港に入港した客船「飛鳥Ⅱ」船内で開かれた。県内沿岸市町村の自治体をはじめ、観光、宿泊、交通などの関係者ら約50人が出席し、同事業の概要説明や台湾の台中市旅行組合関係者らとの意見交換などを実施。参加者らは台湾の観光関係者から旅行者のニーズや三陸の魅力などを聞き、外国人旅行者の誘客拡大に向けた商品開発、周遊ルートのあり方を探った。

 

商品開発や周遊ルート探る、台湾関係者と意見交換


 岩手県を中心とした北東北インバウンド交流拡大モデル事業は、平成29年度から実施。同年度は外国人旅行者の誘客に成果を挙げるべく、沿岸部を中心に新たな観光コンテンツの開発、既存観光コンテンツの磨き上げ、機運醸成、意識啓発などに取り組み、外国人旅行者向けの旅行商品の開発を行った。
 本年度は、昨年度のフォローアップとともに、整備中の三陸沿岸道路や、岩手初の国際定期便として就航した花巻─台北便、来年春にリアス線が開業予定の三陸鉄道などを活用した市町村連携、観光地域づくりに資する取り組みを推進する予定としている。
 事業概要の説明会には、大船渡市、陸前高田市をはじめとする県内沿岸市町村や観光、宿泊、交通の各機関から関係者約50人が出席。また、外国人旅行客を送る側の声を聞こうと、13日から5泊4日の日程で気仙などの岩手訪問旅行を行っている台中市旅行組合の関係者4人も同席した。
 岩手復興局の重高浩一次長は「県内の外国人観光客は内陸を中心に訪れているが、道路や三陸鉄道の整備が図られれば、三陸が身近になると期待される。意見をいただき、よりよいツアーができれば」とあいさつ。開催地を代表し、戸田公明市長も同事業を契機とした外国人観光客の誘客拡大に期待を込めてあいさつした。
 続いて、岩手復興局側が同事業について説明。協議では、「台湾市場が岩手県に期待すること」をテーマに、台中市の旅行関係者らから生の声を聞いた。
 台中の関係者らは「レストランや宿泊施設が受け入れ態勢を整えているかが大切。ホテルでは中国語のパンフレットを備えているかや、話ができるスタッフがいるかも重要になる」「中華圏の観光客は夜食を食べるが、遅くまで開店している売店が少なく、距離も遠い。20~30代の若者は、夜のエンターテインメントがほしい」などと語った。
 出席者側からは「旅行先でドライブをすることに魅力を感じているか」などと質問。台中の関係者らは「沿岸地域は車が少なく、運転も気持ちがいい。ドライブ観光には適している」「宿泊地に温泉があればベストだが、部屋にも風呂があるといい」などと答えた。
 このほか、「台湾では新しい旅行のタイプとして、10人以下や家族単位の小団体旅行が増えている。費用を出すのはその中の一人になるので、価格設定は安めになっている」といった情報の提供もあった。
 同事業では今後、外国人目線を取り入れた魅力的な旅行商品の造成と情報発信などに向け、受け入れ態勢の構築や知られていないコンテンツの発掘と磨き上げ、商品のプロモーション開発に取り組む計画。復興道路や復興支援道路の活用、防災教育を生かした教育旅行市場の拡大など、三陸ならではの特徴、強みを生かしたビジネスモデルの検討なども進めていく。
 説明会後、参加者らは飛鳥Ⅱの船内を見学。名刺交換も行い、新たなネットワークの構築にも努めた。
 台中市旅行組合監事の陳惠珠さん(56)は、「三陸にはきれいな景色があるが、見るだけではなく、体験できるプログラムの情報発信などが求められる。一日漁師体験などができるのが三陸の強みであり、こうした体験型プログラムをもっとPRすれば、お客さんは来ると思う」と話していた。
 重高次長は「台中市の方々からいただいた意見を踏まえるとともに、地元の受け入れ態勢の状況把握を進め、うまくマッチングできるかを考え、本年度中には試験的な取り組みをしたい。来年はラグビーワールドカップが開かれるなど、岩手にとってはビッグイヤーになる。これに向け、本年度でできるだけのことをやっていきたい」と今後の展開へ意欲をみせていた。