4200万円の着服発覚、行方不明の男性職員関与/大船渡市農協

▲ 記者会見で謝罪する菊池組合長(中央)ら役員=大船渡市農協猪川支店

 大船渡市農協(菊池司代表理事組合長)は15日、営農部監理役の男性職員(55)が陸前高田市の農業関係任意団体関連口座の貯金を無断で引き出したほか、平成28~29年産玄米関連業務で不正な手続きを行い、合わせて約4200万円を着服していたと発表した。
 同日午後、猪川町の猪川支店で記者会見を開き、菊池組合長、新沼賢太郎代表理事専務、柏﨑明彦常務理事、志田寿常務理事、互野孝常勤監事が出席。八木橋伸之弁護士(岩手総合法律事務所所長)同席のもと、経緯などを説明した。
 それによると、この職員は事務局員を務めていた市農業再生協議会の普通貯金口座から、平成25年11月1日~今年3月29日の間、約2500万円を計72回にわたって同農協高田、竹駒両支店で独断で引き出していた。
 東日本大震災からの農業復興を目的とする同協議会は同農協や陸前高田市、同市農業委員会などが震災後に立ち上げた。口座には、被災して作付けできなくなった市内生産分を近隣市町の減反分で対応した際の調整金が主に入っていたといい、全額がなくなっていた。通帳は男性職員が1人で管理。印鑑は市の事務局が金庫で保管しており、この職員に使用させた経緯はないという。
 また、この職員は28~29年産玄米について、組合の経理を通さず販売し、約1700万円を着服していたという。原則として契約先にのみ販売する分について、28年10月4日~今年8月28日にかけ、契約外の業者や個人に販売。支払いは従来、口座振込だが、自身で集金したという。取引量は多い時で、1袋30㌔入りで100袋だったという。
 この職員は合併前の陸前高田市農協に採用され、正職員として34年余勤務。営農部門が長く、直近ではコメ部門を担当。今年9月15日、この職員の家族から農協に「家に帰ってこない」と連絡があり、現在も行方不明。同18日、陸前高田市から農業再生協議会の口座にかかる問い合わせがあったことを受け、農協がこの職員の担当業務を調査したところ、協議会と玄米販売の双方で、着服が疑われる金の動きが確認された。
 職員からはこれ以降、3度にわたり、家族宛ての手紙が届いており、着服を認める記述もあるという。家族や同僚からの聞き取りでは、金に困っている様子や派手に遊んでいる様子はなかったという。
 農協では今後、刑事告訴も含めた対応を視野に入れ、管理監督者や役員の処分も検討していくとしている。組合員に向けては、会見に合わせて同日から店頭やホームページでお詫び文書を掲載したほか、地区別座談会などでも説明していくという。
 記者会見冒頭、菊池組合長は「あってはならないことで、皆さまに対して心からおわび申し上げる。チェック機能の甘さ、内部けん制の不備が発生の一因であり、責任を重く受け止めている」と涙ながらに謝罪。
 「損失額についてはほぼ明らかになったと思っているが、今後も再確認を含めて調査を進める。第三者委員会も立ち上げ、管理上の問題点を調べ上げ、再発防止の手立てを講じていきたい」としている。