被災跡地で広場整備着手、末崎町の細浦地区/大船渡

▲ 細浦地区に整備されるコミュニティ広場「シーサイドパーク細浦」のイメージ図(大船渡市提供)

 大船渡市は、東日本大震災の大津波で被災した末崎町の細浦地区で、被災跡地を活用したコミュニティ広場の整備に着手した。広場の隣接地では、地元の細浦地区再生協議会(岩脇晶会長)が毎月、「細浦復興朝市」を開催しており、こうした活動や交流の拠点に——と整備されるもの。広場にはあずまややベンチなどを設ける計画で、本年度末の完成、平成31年度の供用開始を目指す。完成後は、人的交流の活性化や震災で分散した地域コミュニティーの再生が図られると期待が寄せられている。

 

年度末に完成、新年度供用へ

 

復興朝市の会場(左手)に隣接する形で広場を整備=末崎町

 市は津波で浸水被害を受けたり、津波浸水シミュレーションで被害が予想される市内26地区を災害危険区域に指定。
 このうち、防災集団移転促進事業(防集)による買取地が相当規模で発生するなど、被災跡地の利用検討が必要な12地区では土地利用方針図の見直し(実現化方策の策定)を行い、細浦などの10地区では計画した事業に着手。すでに、一部の事業を完了した地区もある。
 細浦地区では、防集や災害公営住宅整備事業によって震災前の地域コミュニティーが分散。地域活動が低調となった。
 そこで、細浦地区再生協議会では地区のにぎわい創出や復興に向けた住民の意欲喚起などを目的に、27年5月から毎月最終週の日曜日を中心に復興朝市を開催。長源寺参道付近に会場を設けて鮮魚や野菜、菓子、雑貨などを販売しており、地域住民の買い物の場や交流の拠点として親しまれている。
 しかし、会場には宅地境の基礎やコンクリート構造物の残骸など津波の爪跡が残り、宅盤ごとの段差もみられる。地域側からは、こうした環境を改善し、朝市などの地域活動や交流、コミュニティー再生の拠点となる場が求められ、千葉大学などの支援組織も交えた協議を重ねた結果、朝市会場の隣接地に広場を整備することとなった。
 コミュニティ広場の名称は「シーサイドパーク細浦」で、複数候補の中から地域で決定。防集による買取地や交換などで取得した民地を利用しており、敷地面積は約3100平方㍍となる。
 クローバーの緑地帯をメーンに、高低差約1㍍の傾斜をつけた芝生の丘、コンクリート製のエントランスや歩道を配置。3㍍四方の屋根をつけたあずまや、水飲み場、ベンチ(2人がけ)8基、サークルベンチ1基、ソーラー式照明灯3基、園名板を設ける。また、ハナミズキ8本や、地域の要望を受けたシンボルツリーも植えられる計画。
 概算事業費は5063万円で、すべて国の復興交付金を活用。復興交付金を用いた被災跡地の広場整備事業は、三陸町越喜来浦浜地区の「ど根性ポプラ広場」に続いて2カ所目となる。
 測量設計業務は㈱菊池技研コンサルタント、整備工事は㈱アイケンが担当。工事は今月着工し、現在は土砂の搬入が完了した段階となっている。
 今後は、広場に接する主要地方道大船渡広田陸前高田線の高さに合わせて30㌢程度のかさ上げなどを行うなど、整備を進めていく。工期は31年3月31日まで。31年度に供用を開始する見込みで、広場の維持管理は地域が行うこととなっている。
 市災害復興局土地利用課の佐々木義久課長は「広場が地区全体のコミュニケーションや交流の活性化、さらなる復興への意欲喚起につながる場所になれば。本年度中に完成させ、住民の方々に活用してもらいたい」と話している。