今季出荷量 前年下回る53㌧、広田湾産イシカゲ貝/陸前高田

▲ 今季の出荷量は約53㌧となったエゾイシカゲガイ=気仙町

 陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)が「広田湾産イシカゲ貝」としてブランド化を目指す特産「エゾイシカゲガイ」の今季出荷実績がまとまった。数量は、前年比約15㌧減の53・3㌧。天然採苗による稚貝を十分に確保できなかったことによるものだが、当初計画を2㌧上回った。単価は前年よりも高めで維持し、関係者は「高単価で売り切れたのは助かった。認知度が上がったという見方もできる」と市場などでの浸透に手応えを語る。

 

稚貝 十分に確保できず、単価は高まり浸透に手応え

 

 クリーム色のプリプリとした身が濃厚で甘く、料亭やすし店からの需要が高いエゾイシカゲガイ。同市は全国で唯一、産業ベースで養殖を行っている。
 東日本大震災で養殖施設が壊滅したが、平成26年に出荷を再開。現在は13人が生産している。
 今季は、昨年とほぼ同時期の7月初旬の出荷開始を見込んでいたが、まひ性貝毒の影響で出荷停止に。その後の検査で、3週間連続で規制値を下回ったことから規制が解除され、計画よりも約1カ月遅れの7月末に初出荷にこぎ着けた。
 出荷は東京・築地市場が閉場した今月上旬まで続けた。天然採苗から出荷まで約2年かけて生産しているが、今季分は、稚貝を前年並みに確保しきれなかったため、出荷量が落ち込んだ。
 同漁協によると、支所別の出荷量は気仙が前年比5・6㌧減の36・4㌧、米崎・小友が同10・5㌧減の12・5㌧、広田が同0・6㌧減の4・4㌧。成育はおおむね良好で、気仙支所は計画量を若干下回ったが、広田は計画をほぼ達成し、米崎・小友は計画量を3㌧上回った。
 1㌔当たりの平均単価は、前年比300円増の2800円。関西圏からの引き合いが強まり、需要ピークの夏以降も順調に売れたという。
 地元でも高田高校や水産加工会社が、エゾイシカゲガイを使った加工品製造に取り組んだり、居酒屋で刺し身として提供されるなど、徐々に認知度を上げている。
 一方、生産量が年によってばらつきがあるのが課題。稚貝の確保状況から見ると、来年も今年と同程度の出荷量が見込まれるという。
 エゾイシカゲガイは、28日に広田町の広田漁港荷さばき施設で開かれる「広田湾大漁まつり」でも販売される予定。
 同漁協気仙支所販売・購買・営漁指導課の武蔵務主任(43)は「昨年よりも数量は減ったが、計画を上回ることができ、関西からの需要も増えた。地元でももっと知ってもらえるよう取り組んでいきたい」と語る。
 生産者でつくる広田湾産イシカゲ貝生産組合の熊谷信弘組合長(62)=気仙町=は「単価も良く、認知度の高まりを感じている。稚貝をいかに確保していくかというのは永遠の課題。関係機関の力を借りながら稚貝の付着状況などを調査したデータも蓄積させ、少しでも安定生産につなげられれば」と意気込む。