地域共存へ協議会発足、荷沢峠周辺での風力発電/住田町

▲ 農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の素案などを審議した協議会=住田町役場

 ㈱グリーンパワーインベストメント(本社・東京都、坂木満社長)が住田、遠野両市町にまたがる地域で計画している住田遠野風力発電事業(仮称)の施設整備や売電収入を生かした地域活性化などを協議する第1回住田町再生可能エネルギー推進協議会は30日、町役場で開かれた。風力発電は同社が主体となり、荷沢峠北東側の遠野市内に17基、住田町内に11基を計画。平成32年春以降の着工後、3年程度での完了を見据える。この日は、立地計画や農地転用を進める手続き、同社が発電事業で得た収入の一部を地域の農林業振興策に還元する方針などを確認した。

 

 東京の事業者が計画、売電収入の一部を地元に還元

 

 協議会は町が設置し、発電事業者や農林漁業団体、関係住民、学識経験者、町の関係者ら11人で構成。神田謙一町長が各委員に委嘱状を交付したあと、「計画されている風力発電は、再生可能エネルギーの推進や町の活性化につながる。活発な意見を」と述べた。
 引き続き、農林水産省東北農政局の担当者が、平成26年に施行された農山漁村再生可能エネルギー法の概要を説明。事業計画地のうち、住田町側はかつての牧草地を活用するため、農地転用の手続きが必要となる。同法に基づいて協議会を設置すると、農地転用の手続きや、売電収入の一部を地元の農林業振興策につなげるための仕組みがスムーズに進められる。
 グリーンパワー社の仁平裕之プロジェクトマネージャーは、現段階における同発電事業の事業概要を報告。同社は16年9月に設立し、高知、島根、千葉各県ですでに発電事業が稼働し、青森県では建設中、住田遠野を含む3カ所が着工準備中となっている。事業実施時は、子会社を設立して運営する。
 予定地は遠野市側が小友町周辺地区で、住田町側は下有住火の土周辺地区。4200㌔㍗の風力発電機を28基設置する計画で、総事業費は約300億円とみている。
 導入を検討している風力発電機は、風車の回転直径が110㍍超。3枚の羽根が回り、風車高は約170㍍。風車の羽根が回転することで発電機を回し、東北電力㈱に供給する。
 年間予想発電量は約9万9750㌔㍗。約6万世帯分で、住田町と遠野、釜石、大船渡各市の家庭消費電力に相当する。
 同社では、これまで地理的条件を確認したほか、イヌワシが餌をとる区域も外した。事業化を見据えて平成24年から着手しており、現在は各種許認可手続きを行っている。着工目標は32年4月で、工事完工目標は35年3月を見込む。
 整備により、町には20年間で15億円程度の税収が見込まれる。さらに同社では建設、運転保守業務の地元採用を進めるほか、売電収入の一部を地元に還元し、地域活性化に貢献したい姿勢も示す。
 説明を聞いた委員からは「計画地に生息するニホンジカが里山に来て、農作物被害が拡大するのでは」との指摘も。仁平氏は「牛を飼育している場所でも設置の実績があり、恒常的に里山に下りてきて荒らすことはないと考える」と述べた。
 後半の協議では、同協議会の規約を決定。会長には町農政課の紺野勝利課長を選出した。
 また、同法に基づく基本計画の素案も議論。農業での利用が低い遊休農地の有効活用や、発電事業の収益を生かした農林業活性化・雇用創出を図る方針を確認した。
 具体的な計画案は11月下旬以降に行われる次回協議会で詰め、年度内の計画策定を目指す。資料に基づく発電事業位置図は別掲。