8年ぶりに橋板新調、下有住・松日橋復旧作業/住田(別写真あり)

▲ 川水に入って作業にあたる地域住民=下有住

 住田町下有住高瀬地内の気仙川で3日、松日橋の復旧作業が行われた。先月1日に最接近した台風24号に伴う大雨・増水で流され、地域住民が力を合わせて木製の橋脚や橋板などを取り付けた。今回は、8年ぶりに橋板を新調。川水に浸って汗を流した地域住民は、心を一つにしながら古里らしい景観を守る思いを新たにした。

 

心一つに伝統継承

台風24号で流され


 松日橋は、昭和57年に発足した同橋受益者組合(金野純一組合長)が管理。左岸側の松日、右岸側の中山の計18世帯で構成する。かつては下有住だけで七つの木橋があったというが、近年はこの地だけになった。
 橋の長さは約40㍍。橋脚は、「叉股(ざまざ)」と呼ばれる太い枝が二股に分かれた部分を使う。増水時はワイヤーロープでつながれた橋板が浮き、橋脚は流れに逆らわない形で倒れ、橋の形が失われる仕組みとなっている。
 先月1日に通過した台風24号の大雨に見舞われ、気仙川が増水した影響で橋が流された。復旧作業は当初、先月27日に予定していたが降雨の影響で延期。この日はスッキリとした青空に恵まれ、近隣の住民ら10人余りが参加した。
 川に入った住民らは、長年受け継がれてきた勘や経験を頼りにしながら橋脚を7カ所に設置。足場が安定しない場所も多かったが、時折「せーの、それっ」などと声を合わせて作業を進めた。
 これまで使っていた橋板は8年が経過したため、今回は予備として当時から保管していたFSC森林認証を受けたスギ材を活用。厚さ15㌢、幅50~60㌢、長さ11㍍の板4枚を、つなぎ合わせるように架けた。
 台風24号の影響で、橋の部材を固定するワイヤーをくくりつけていた川岸のクルミの木もなぎ倒されたため、今回の作業は手数が増え、これまでよりも時間を要した。それでも地道に作業を進めた結果、無事に伝統の風景が復活した。
 同組合では先月、橋板を新たにつくるための財源確保に向け、クラウドファンディングに挑戦。広く賛同があり、目標金額30万円を達成した。
 金野組合長(74)は「地元内外に橋を残してほしいと思う人が増えてくれてうれしい。先月27日は残念ながら作業が中止となったが、クラウドファンディングに協力してくれた愛知県の人が手伝いに駆けつけてくれた」と語る。
 地域住民の生活を支え続けた風景は今、古里らしさを感じさせる佇まいとして多くの人々を引きつける存在となった。金野組合長は「架けたのだから少しでも長くもってほしいが、自然にはかなわない。橋も木製だから、古くなったらどうしても新しくする時期が来る。それでも、この風景は今後も残さなければ」と力を込める。