「空き室増え寂しい」50%、陸前高田再生支援研究Pが8年目の仮設住宅団地調査

 法政、明治、工学院など各大学の教員、学生らによる陸前高田地域再生支援研究プロジェクトは、陸前高田市と住田町の仮設住宅団地で8月に行ったアンケート調査の速報版をまとめた。調査は25、28年度以来3回目。前回調査に続き、仮設住宅暮らしの長期化に伴う心的影響などを尋ねた。入居者減少が続く中、「空き室が増えて寂しい」と答えた割合は50%。ストレスに関する質問では67%が「仮設住宅の長期化」が要因と回答した。


 同プロジェクトは各大学の建築・都市計画、国土計画、社会福祉などの研究者らが相互に協力・補完しながら支援活動を展開。東日本大震災が発災した平成23年から毎年行っている。
 本年度は8月に、学生や教授ら延べ約40人が気仙入り。陸前高田市と住田町の仮設住宅団地計22カ所を回った。
 例年と同様、団地の自治会長らを対象とした聞き取り調査を実施。さらに、今後の復興施策や取り組みに反映させようと、2年ぶりに現在の仮説住宅の暮らしや住まいの状況、生活を尋ねる全居住世帯を対象としたアンケートも行った。
 対象は212世帯で、2年前の調査時に比べて600世帯余り少ない。回収数は93世帯(43・9%)。団地の集約などで「仮設住宅から別の仮設住宅に転居した」割合は3割程度という。
 被災前の居住地は高田町が46%で、気仙町今泉が43%。7割以上が土地区画整理事業をはじめとした基盤整備の完了を待ち続けるほか、「決まっていない」も5%あった。
 速報版=別表参照=によると、現在の仮設住宅の暮らしについて「空き室が増えて寂しい」と答えたのは50%。一方で「自分だけが取り残されたと思う」は27%だった。
 「部屋が狭くて暮らしにくい」は70%を超え、厳しい住環境が改めて浮き彫りに。半面「近所付き合いが良好である」「経済的な負担が少なくて助かる」はいずれも60%近い回答があった。
 「暮らしでストレスを感じることは」との問い(三つまで選択可)では、暮らしの長期化を挙げる回答が3分の2を占め、前回調査と同様の傾向に。健康不安も40%を超え、以下、交通の便や住宅再建の見通しなどが続いた。
 「今後の暮らしで、不安に思うことは」(同)では経済が64%。健康・医療は59%、住宅は42%、介護22%、仕事17%と続いた。
 仮設住宅暮らしが7年以上に及ぶ中「長期間、暮らさざるを得ないことについて、どう思うか」との設問も。「大規模な災害だから仕方ない」との意見は84%に達した。
 「復興計画が不十分で、もっと早くできたはずだ」に関しては、58%が賛同。一方で「行政は努力しているが、さまざまな条件のため仕方がない」も55%に上った。「正確な情報があれば、別の選択をしたかった」は30%、「住民の意見を反映すれば、早くできたはずだ」は39%にとどまった。
 1年前と比較した身体の健康状態に関しては「変わらない」が67%で、「悪くなった」が33%。経済状況に関しては「非常に苦しい」が13%で、「かなり苦しい」が21%。一昨年の調査と比べ「非常に苦しい」が5ポイント高くなった。
 プロジェクトの研究代表を務める法政大学現代福祉学部の宮城孝教授は、仮設住宅から別の仮設住宅に転居せざるを得ない状況について「戦後の日本の災害史においても、初めての状況」と指摘。
 調査をふまえ「暮らしなどの悩みや不安についての質問では、『相談相手がいない』との回答割合が30%で、同じ仮設住宅に住む知人・友人は29%だった。仮設団地の住民が減る中、今後の相談については、市町の窓口になるとの回答が多かった」と語る。
 さらに「住宅再建の見通しがある方が多い一方、少数だがまだない人もいる。行政や福祉機関は相談を待つのではなく、積極的に地域に出向く『アウトリーチ』が重要になるでのは」と話す。
 A3サイズ(二つ折り)にまとめたアンケート調査速報版は、各団地や行政機関などに送付。聞き取り内容をまとめた報告書は、年内に取りまとめることにしている。