今後も生産者の力に、気仙の農業振興に奔走/岐阜県から派遣の新藤さん

▲ 農家に出向き、笑顔で会話を弾ませる新藤さん(左端)=陸前高田

 東日本大震災の発生から、あす11日で7年8カ月を迎える中、県外自治体などから派遣された応援職員は今なお、気仙の復旧・復興に尽力している。県大船渡農業改良普及センター主査で、農業普及員の新藤雅文さん(64)もその一人。岐阜県職員を定年退職後、気仙の農業振興に汗を流し、本年度で4年目を迎えた。「まだやるべきことはある。復興にかける生産者の力になりたい」と力を込める。

 

 普及セで勤務4年目

 

 新藤さんは、岐阜県農業大学校卒業後の昭和50年、同県に入庁。以来40年間、農政畑一筋の道を歩んできた。
 平成27年春に定年退職。県外に出たことがないこれまでの職歴を踏まえ、知見を広げたいと考えていた時に、岩手県被災地への職員派遣の話が舞い込んだ。「困っている人の手助けとなれば」。岩手は縁もゆかりもない地だが、迷うことなく手を挙げた。
 県大船渡農業改良普及センター園芸経営体育成チームに派遣され、現役時代からモットーとしてきた現場主義で仕事に当たった。「地域を知り、人を知って、初めて生産者への指導が成り立つ。デスクにいてばかりでは仕事にならない」と、とにかく各地の農家に出向いた。地域性のルーツを学ぶため、休みの日には図書館に通い、郷土史を読みあさった。
 農家は高齢化が進み、中山間地域の農業再生・振興への課題は山積み。「まだ岐阜に帰るわけにはいかない」と、1年、また1年と任期を更新し、気づけば4年目。身近な営農相談、野菜栽培指導に加え、園芸経営モデルの策定、新規就農者の受け入れ・定着支援、農家の経営安定化支援など幅広い業務をこなしている。
 どの場でも謙虚な姿勢は、生産者や職場の人望も集める。陸前高田市小友町のネギ農家・及川常明さん(70)は「休日を使って畑仕事を手伝うなど、われわれに寄り添ってくれる。指導も的確で、本当に助かる」と感謝する。
 同センターの後藤純子普及課長は「若手職員の模範。営農指導などで現場を訪れる時には『新藤さんを』と農家さんから指名されることも多い」と信頼を寄せる。
 新藤さんは「気仙は本当に心の温かい人ばかり。農産物に加え、海の幸も豊か」と魅力を語る。「ハード面の復旧はめどが立ちつつあるが、農家への指導などソフト面の支援はこれからも求められ続ける」と気を引き締める。
 派遣任期は最長5年。「岐阜県職員の代表として派遣され、岩手県に受け入れてもらっている以上、両県の期待に応える責任がある。できることはわずかなことかもしれないが、自分なりに仕事をやり遂げたいと思っている」と新藤さん。来年度も継続して気仙の農家とともに汗を流すつもりだ。