震災7年後の高校生描く、2年連続で東北大会へ/大船渡高演劇部(別写真あり)

▲ 熱のこもった稽古を行う部員ら=大船渡高

 「美しいものは、いつもここにあった」――。県立大船渡高校の演劇部(部員19人)は、12月21日(金)〜23日(日)に秋田県で開かれる第51回東北地区高校演劇発表会に出場する。盛岡市でこのほど開かれた第41回県高校総合文化祭演劇部門発表会・第44回県高校演劇発表大会で優秀校一席に輝き、2年連続で大舞台への切符をつかんだ。演じるのは、東日本大震災から7年がたった大船渡で生活する高校生らを描いた『椿と海』。12月15日(土)に盛町のリアスホールで公開リハーサルを行い、市民らに猛稽古の成果を披露する。

 

12月15日に公開リハ

 

 東北地区高校演劇発表会は、東北各県の県大会で上位の成績を収めた2校(開催県は3校)が出場。全13校のうち、上位2位までが来夏の全国高総文祭に出場できる。
 同校が発表する『椿と海』は、同校をモデルとした「猪川高校」が舞台。総合的な学習の時間に、気仙の民話を調べていた生徒たちが、「ツバキの精」と人間の女の子の悲恋物語『海と椿』を演じることになったというストーリー。
 劇中の『海と椿』は、海の魔物に襲われて花を咲かせなくなったツバキが再び花を咲かせるという民話で、東日本大震災津波で家を失った生徒がツバキの精役を任され、劇に取り組んでいくことで、大切なものに気づいていく。
 脚本を書き下ろした同部顧問の多田知恵子教諭(42)は「被災した生徒たちは、小学校のころ、大切なものを突然失った経験がある。今年6月ごろに被災を経験した生徒に話を聞いたが、その経験は乗り越えたり、癒やされたりするものではないと感じた」という。「それでも自分の心を明るくしてくれたり、幸せにしてくれるものがあると気づくことはできるのかなと思い、脚本を書いた」と物語の意図を説明する。
 県高総文祭に県南地区代表として出場した同校は、最優秀校に次ぐ2位相当の優秀校一席となり、東北地区発表会出場を決めた。東日本大震災での高校生の体験をもとにした飴屋法水さんの『ブルーシート』を大幅に潤色した〝大高版〟で、同発表会に初出場を果たした昨年に続き、2年連続の快挙を達成した。
 演出を手がける部長の植木彩香さん(2年)は「役者にどう演技してほしいか言葉で伝えるのが難しいが、やりがいはある。本番では県高総文祭以上のものを披露したい」と力を込める。
 今月下旬には大槌町での公演を控えているが、2年生が修学旅行で不在のため、役者を入れ替えて稽古を積んでいる。
 また、本番を間近に控えた12月15日にリアスホール大ホールで公開リハーサルを開き、気仙の住民らに演劇を披露する。
 主人公格の咲山椿役を演じる新沼温斗君(3年)は「東日本大震災がテーマになっているのは昨年と同じだが、内容はかなり違う。見ている人に楽しんでもらえれば。気仙のみなさんには、地元の高校に演劇部があり、地元に根ざした劇を大会で披露するなど精力的に活動していることを知ってもらえたらうれしい」と話していた。
 公開リハーサルは午後3時開場、同3時30分開演。問い合わせは多田教諭(℡26・4306)まで。