「後見人」地域力で充実を、高齢化社会見据え初の住民向け養成講座開講/住田町
平成30年11月25日付 3面
住田町や町社会福祉協議会による市民(町民)後見人養成講座は24日、世田米の町保健福祉センターで開講した。高齢化社会が進行する中、さまざまな契約手続きに対する円滑な対応や見守り充実を見据え、住民や福祉機関など地域コミュニティーを生かした普及を図る初の取り組み。参加者は、身近な地域で普及させる大切さを再確認しながら熱心に知識を深めた。
成年後見制度は認知症や障害などによって判断能力が不十分で、自分一人では契約や財産の管理などが難しい住民を支援する制度。親族のほかに弁護士や司法書士などが担っているが、高齢化の進行や制度改正などに伴い、一定の知識などを身につけた住民を養成する機運が高まっている。
町では昨年度から、成年後見制度普及啓発事業に取り組み、制度の周知に努めてきた。本年度は日常の金銭管理などを支援する「町民後見人」を養成し、今後の積極的な制度活用を見据えて養成講座を初めて企画した。
社協や福祉施設関係者、民生委員、住民ら町内を中心に14人が申し込み、この日は13人が出席。開講式では、町保健福祉課の佐々木光彦課長が「本町における成年後見制度の先駆者となって、普及啓発に励んでいただきたい」とあいさつした。
基本講座では東京大学教育学研究科社会教育学・生涯学習論研究室地域後見推進プロジェクトの東啓二特任専門職員(56)が講師に。東さんはかつて、北海道南富良野町で市民後見制度の普及にかかわった経歴を持つ。地方自治体が抱える悩みや実情を交えながら、概論的な知識を伝えた。
これまで後見人を担ってきた弁護士、司法書士だけでは限界があるとし「いちばんの期待は市民後見人」と強調。
家庭裁判所が選任する法定後見制度では、判断能力の低下などによって「後見」「保佐」「補助」の3類型があると説明し、さらに判断能力がなくなる前に自分の後見人になってほしい人を選ぶ「任意後見制度」にも言及した。
講座に先立ち、各出席者による自己紹介も。「母親が一人で暮らしており、今後のことを考えると不安」「社会資源がなければ、自らつくる」「日常生活を助けてあげる支援が、今後どんどん必要となってくる」といったスピーチがあり、地域における制度普及の必要性が浮き彫りとなった。
座学は25日(日)、12月8日(土)、15日(土)、16日(日)の全5回。成年後見制度や関係制度、実務などを学び、このほかに地域実習やレポート作成もある。
研修修了者は、町民後見人候補者に登録し、制度利用を希望する住民や案件に応じて、後見人に選考される流れを描く。
住民に身近な福祉事業を展開する社協でも法人後見に向けた活動を進めることにしており、町などでは日ごろから住民と社協が形成している地域コミュニティーを生かした制度普及を目指すことにしている。