「実施計画6月に示す」、市議会一般質問で当局答弁/陸前高田

▲ 陸前高田市議会12月定例会の一般質問が始まった

 陸前高田市議会12月定例会は4日、一般質問が始まった。初日は鵜浦昌也(創生会)、及川修一(新風)、大坂俊(至誠会)、蒲生哲(新志会)の4議員が登壇。今期定例会において「総合計画審査特別委員会」を設置し付託審査される市まちづくり総合計画(平成31〜40年度)の策定について、複数の議員が「基本構想、基本計画だけでなく、実施計画や中長期の財政見通しが併せて示されなければ、議論を深められない」などと対応をただしたのに対し、当局側は、来年6月をめどに実施計画を示したいとしたうえで、「今後、国や県の制度が変わる可能性もある中、財政見通しを作成することは難しい」「総合計画はあくまで市の『方向性』を示すものと考え、議論いただきたい」といった答弁を繰り返した。

 

総合計画に関し論戦

 

 31年度を初年度とし、基本構想と前、後期5年間ずつの基本計画、年度ごとの事務事業や財政計画を示す実施計画の3本柱で進める、市まちづくり総合計画について尋ねたのは、トップ登壇の鵜浦議員と、大坂議員。このうち鵜浦議員は「計画に関する中期の財政計画はいつ示されるのか」とスケジュールを確認した。
 村上幸司総務部次長は「『中期財政見通し』として来年6月をめどに示したい」と答弁。現在、31年度の予算編成を検討中であり、国の制度などの動向を見守りながら作業にあたりたいと説明した。
 鵜浦議員は「財源などの見通しが示されず、どんな事業を実施していくのかが分からないのに、総合計画について審議することには違和感がある」として対応を再度質問。戸羽太市長は、「国の予算編成が分かる前に財政見通しを作っても『絵に描いた餅』にしかならない。長いスパンの財政計画を立てたとしても、どこかの段階で制度が変わるなどし、必ず『話と違う』ということが起きてくる」として、現段階で見通しを示せない背景に理解を求めた。
 大坂議員も同様に、「基本計画と実施計画はセットで考えるべきもの。本年度内に総合計画を策定したとして、来年の6月になるまで実施計画もない状態というのはおかしい」としたうえで、「議決するわれわれの責任も重い。実施計画や財政フレームを示してもらわないと、議論が空論になる」と、対応を強く求めた。
 市長は「あくまでも総合計画は市の方向性を示すもの。大枠の方向性を決める段階で、事業の一つ一つ、予算の一つ一つを議論していたらいつまでも計画はできない。ただし、われわれとしても、提案した内容のまま決めていただきたいとは思っておらず、丁寧な審議をお願いし、議論していきたい」と述べた。
 鵜浦議員はこのほか、今年6月の大阪北部地震の際、高槻市において通学路のブロック塀が倒壊し、小学生が犠牲となったことを受け、通学路の安全対策について現状を確認。阿部勝建設部長は「学校敷地内で調査したところ、危険なブロック塀の存在は確認されなかった。通学路については合同安全点検を行い、早急に改善が必要な1カ所についてはすでに対処した。今後も安全点検とパトロールによって危険箇所の把握と安全対策に努める」と答弁した。
 及川議員は、震災遺構の活用などについて方針を確認。戸羽市長は「気仙中学校とタピックは内部も見学してもらえるよう検討を進めている」としたうえで、こうした遺構や新しい道の駅内に整備される津波伝承施設などを通じ、「本市を自然災害への学びの場とし、復興まちづくりの姿を示せるものにしたい」と述べた。
 同議員は市内各地の産直や新・道の駅内にできる地域振興施設についても質問。岡本雅之副市長が「ブランド米やリンゴ、イシカゲガイなどの販売を通じて陸前高田のファンを創出する。テスト販売ができるコーナー、農業・漁業体験を提供する受付窓口なども開設し、夢が持てる施設にしたい」とした。
 さらに、高田町における「五の市」の復活、大津波で全壊した屋根付き市場施設の再建に関する見通しを訪ねた同議員に対し、阿部建設部長は「アバッセたかたの背後に場所は確保してある。以前は法人が施設を運営していたが、震災後にその法人も解散したことから、行政が作らねばという思いはあり、財源を検討・調整しているところ」と回答した。
 蒲生議員は、平成5〜22年の震災前まで広田湾漁協気仙支所(旧気仙町漁協)が中心となって5〜12月の毎週土曜に開催していた「長部漁港土曜市」の復活について質問。戸羽市長は「遠方からの来客もあり、地域住民も一体となって実施していた市で、復活を望む声も多い。再開を見据えて漁協と協議を重ねたい」とした。 
 まひ性貝毒の検出により、今年のホタテの水揚げ量が10月末時点で29㌧、総額1300万円程度と、前年同期の1割強にとどまっていることを受け、漁家への救済措置について同議員から問われた市長は、「漁業共済の補助率アップなどについて漁協と詰めさせてもらっている」と述べ、菅野泰浩水産課長も「特定養殖共済」が適用されることなどを説明した。
 また、災害復興工事以外で漁場などの通常工事を行う場合、漁協と受益者が一定の資金を分担する制度があることについて同議員は、「漁業者らの負担を考え、廃止すべきでは」と当局の対応を求めた。市長はこれまでの経緯を説明したうえで「廃止の方向で検討していく」と述べた。