文科省関係者が実地調査、町独自の新設教科/住田(別写真あり)
平成30年12月7日付 1面
文部科学省から研究開発学校に指定されている住田町内の小中学校で6日、同省の視学官や教科調査官らによる実地調査が行われた。各校は町教委と連携し、昨年度から新設教科「地域創造学」の研究を進め、本年度は地域資源を積極的に取り入れた授業実践を展開している。授業公開後の研究協議では、町をあげた教育充実を図る取り組みに高い評価が寄せられた半面、教科としての独自性や地域との協働・理解普及といった課題も浮かび上がった。
授業成果と課題を共有
研究開発学校事業は、教育実践の中で浮かび上がる諸課題、時代に対応した新しい教育課程(カリキュラム)や指導方法を開発するため、学習指導要領等の国の基準によらない教育課程の編成・実施を認める制度。昨年度、世田米小、有住小、世田米中、有住中、県立住田高校の計5校が指定を受けた。
本年度は実践に向け、それぞれの小中学校の時間割に「地域創造学」の授業が62~110時間組み込まれた。住田高では、総合的な学習の時間の中で位置づけてきた。
各校とも、地域資源を積極的に生かしながら、特色あふれる授業を展開。校外に出向いての体験活動や地域住民らを講師役に招くなどして、地域への愛着醸成や課題解決力の向上、学校と地域がより協力しやすい体制づくりなどを模索してきた。
初となる実地調査は、授業実践する中での問題点などについて、文部科学省関係者から直接指導を受けるもの。
同省初等中等教育局からは清原洋一主任視学官、渋谷一典教育課程課教科調査官、同課教育課程企画室審議・調整係の田代和馬専門職が訪れた。
このうち、世田米中学校(佐藤智一校長、生徒63人)では、3年生18人の授業を公開。清原主任視学官らに加え、町内各小中高校や町教委、県教委の関係者らも見守った。
本年度、3年生は「住田の魅力を高めるために、住田の○○を生かしたプロジェクトを考えよう」をテーマに、住民らの協力を得ながら地域創造プランをまとめる取り組みを展開。日常風景を伝えるガイドマップや、星がきれいに見える場所の紹介、植物を生かしたアート制作、地元野菜を用いた食品づくりなどを進めた。
この日の授業では、これまでの実践経過を振り返り、課題解決に向けた取り組みを総括。いずれのプロジェクトも、成果をあげるだけでなく、当初見込んでいなかった難しさに直面し、計画修正や変更などに迫られた。そうした経験で得た学びや感想を、グループ内で共有し合った。
授業後は、別室で研究協議が行われ、授業を振り返りながら意見交換。文科省関係者は「みんなが同じ方向を向き、町をあげて取り組んでいる」などと肯定的に評価したうえで、さらなる実践の充実に向けた課題を挙げた。
この中で「今の状況であれば、(既存教科である)『総合』でも導入できるとみる人も多いかもしれない」との指摘も。地域創造学ならではの強みを打ち出し、地域とのさらなる協働や、地域の未来に直結する〝知〟をはぐくむといった方向性が示された。
また、教科名にもある「創造」の力をどう引き出すかも話題に。アイデアを出し、課題を解決していく流れを大切にしていくとの観点から、児童生徒がより主体的に授業に参画できる工夫の必要性も浮かび上がった。
渋谷調査官は「新しいジャンルの学びに向け、関係機関が一体となって取り組んでいる。難しさもあると思うが、研究を重ねれば重ねるほど、みがかれていく。子どもたちのどのような力をはぐくむかを考えながら改善を重ね、次世代につなげていってほしい」と話し、今後の実践に期待を込めていた。