人口減対策で論戦展開、一般質問に4議員登壇/住田町議会12月定例会

 住田町議会12月定例会は11日に開会し、会期を14日(金)までの4日間と決めたあと、菅野浩正、荻原勝、瀧本正德、村上薫(いずれも無所属)の4議員が一般質問を行った。町人口は5000人台となり、なお年間100人ペースで減り続ける中、複数議員が人口減対策を巡って論戦。当局は、女性が住みやすいまちづくりや移住・定住が可能な住宅確保、生活環境充実など総合的な観点で取り組みを進める姿勢を示した。一般質問は12日も午前10時から行われる。

 

 荻原、瀧本両議員はともに町が掲げる「人口ビジョン・総合戦略・総合計画」や人口減対策を取り上げた。荻原議員は、来年度から本格化する次期計画策定に向けた見直しについて「今年9月改訂版からの継続性を重視するのか、神田新町政となって大幅に刷新するのか」と迫った。
 神田謙一町長は「人口ビジョン、総合戦略、総合計画それぞれの位置づけを変更する必要がある」と答弁。現行では人口ビジョンによる目標値(2040年に人口4000人維持)に重きが置かれているが、次期計画では人口ビジョンの背景や根拠に町の将来像を明確に打ち出し、その達成に向けた戦略などを定めていく方針や、住民協働による計画設定を進める考えなどを強調した。
 結婚支援も取り上げた荻原議員は「次期計画には出会いの場づくりなど、より前段的な策に大刷新するといった文言を盛り込んではどうか」などと発言。神田町長は「結婚をテーマにすると、未婚の方々からは『騒がないでほしい』という声が上がり、取り上げるほど参加しにくくなる実態もある。本町は若い女性が少ないといった特性があり、女性の方々が住みたいと思える町を目指し、子育て環境充実などを発信していくのも人口対策の一つ」と述べ、総合的な観点で進める考えを示した。
 瀧本議員は「多くの町政課題はあるが、町と暮らし維持のために、人口減少対策は思い切った策で臨むべき」とし、若者向け移住・定住促進につながる家賃無料を含めた優遇策を提言。住宅と農地・森林原野の「セット提供」も求めた。
 神田町長は町内の現状として、民間賃貸住宅が少なく、空き家では貸したい側と借りたい側に条件面でミスマッチが生じていることを指摘。184戸ある町営住宅は満室状態で入居者移動が少ないなど、定住促進に向けた住居確保を課題の一つとして挙げた。
 そのうえで、町が進める空き家バンクの活用にも言及しながら「移住者の希望に見合った物件確保や、買い物、医療面など生活環境の充実も進めていきたい」と答弁。「セット提供」に関しては、町内に不動産業者がおらず現状の職員体制では対応が難しいとした一方、関係機関が連携して取り組む方向性を掲げた。
 人口減少下での行財政運営を取り上げたのは、村上議員。財政収支の見通しや改善策を巡り、当局と論戦を交わした。
 神田町長は公債費、物件費、維持補修費などの増加で29年度決算は実質公債費比率が上昇したものの、健全財政といえる範囲内での推移であると答弁。「公債費比率の上昇は放置できず、抑制しなければならない。公債費は年間7億円程度で高止まりする見込みで、今後の状況の急激な悪化は想定されないが、引き続き歳入確保・歳出抑制に努めたい」と述べた。
 また、中期財政見通しの取りまとめに関して、横澤則子企画財政課長は「平成19~23年分が最後でその後は更新していないが、毎年県に提出している財政見通しをもとに運営している。年次時点での状況や今後の傾向を見据え、大枠をつくっている」と語った。
 同議員は文化行政と町づくりについても取り上げ、世田米町家群の重要伝統的建造物群保存地区指定よりも、電柱地中埋設等を進めるべきと提言。神田町長は必要性に理解を示すも「1㌔あたり3~5億円程度が見込まれ、厳しい財政状況の中では困難」と答えた。
 トップ登壇の菅野議員は、町の森林資源や林地残材などによる木質バイオマスエネルギーを活用した温泉施設整備を提案。「観光・産直など交流人口の拡大につなげ、町民の健康で明るい交流ができる施設構想を検討する必要がある」として、当局の見解を質した。
 神田町長は「木質バイオマスエネルギー活用の体制整備を進める必要があり、(隣接市の温泉施設利用など)広域的な対応も重要」「財政が厳しい中、経済ベースに乗る事業を選択する必要がある」などと答弁。これまでと同様、早期整備は難しい見解を示した。
 再質問で同議員は「こうした施設が、災害対応や避難所にも生かされることも勘案しては」と発言。これに対して町長は「我慢できるものは我慢するなど、今後は町民のみなさんにも認識していただかなければ地域づくりは厳しくなる」と、理解を求めた。