気象庁大気環境観測所が来年度から無人化へ、必要な機械導入にメド/三陸町綾里

▲ 来年度に無人化される気象庁大気環境観測所

 二酸化炭素濃度の観測などで国内で最も古い歴史を持ち、温室効果ガスなどの長期監視に大きく貢献している大船渡市三陸町綾里の気象庁大気環境観測所(吉田雅司所長)が、来年度から無人化されることが17日までに明らかになった。無人化に必要な機械の導入にメドがついたため。観測種目などは変更せず、今後も温室効果ガスなどを観測する本州唯一の施設として役割を果たしていく。

 

温室効果ガスなど監視 観測種目は変わらず

 

 綾里岬先端の綾里崎にある同観測所は、昭和45年に気象ロケット観測所として開所。51年に前身であるWMO(世界気象機関)大気バックグランド汚染地域観測所が設立され、上空から地表に降下してくる「降水・降下じん」の科学観測などを行う「大気バックグランド観測業務」を開始。平成23年12月の観測終了まで、酸性雨の長期監視に貢献した。
 また、昭和62年には国内で初めてとなる二酸化炭素濃度の定常的な観測を開始。これを皮切りに、オゾン層破壊の原因物質であるフロン類や、一酸化二窒素、四塩化炭素などの温室効果ガスとその関連ガスの観測を順次スタートさせた。
 平成8年に組織再編により、観測部観測課高層気象観測室気象ロケット観測所と、観測部環境気象課大気環境観測所に分離した。
 14年4月に気象ロケット観測所が廃止されたあとも、同観測所は職員5人で業務を継続。現在は二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、地上オゾン、フロン類、一酸化二窒素、四塩化炭素などを、24時間連続または1時間ごとに1回観測している。
 これまでも同観測所の無人化に向けた検討が進められてきたが、本年度に入って観測に必要なガスのボンベ交換や装置の除湿、フィルターの交換といった人の手が必要とされていた保守などの作業を実施できる機械の導入にメドがついたことから、来年度からの無人化が決まった。無人化後も、これまで同様の観測を実施していく。
 気象ロケット観測所とともに綾里の宮野地区に建設された宿舎の扱いについては、今後協議していくという。
 国内での大気環境の観測は、同観測所のほか、南鳥島、与那国島特別地域両気象観測所と合わせて3カ所で行われているが、本州唯一の観測所である同観測所が最も歴史が古く、そのデータの蓄積は世界的に見ても貴重という。
 吉田所長(57)は「無人化されるといっても、この観測所が温室効果ガスなどを測定する最前線であることにかわりない。これからも頑張っていくので、地元の方たちにも、これまでと変わらずよろしくお願いしたい」と話している。