大船渡の海から発見、生分解性プラ合成の微生物/岩大・山田准教授の研究室

▲ 山田准教授(右端)と研究室の学生ら

大船渡で発見された微生物から合成されたPHAで作成したフィルム

 岩手大学農学部の山田美和准教授(37)の研究室は、生分解性プラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成する微生物を大船渡の海から発見した。これに関する論文が、平成30年度県三陸海域研究論文知事表彰で県知事賞を受賞した。化石燃料由来のプラスチックが及ぼす環境負荷が世界的に問題となる中、注目を集めている生分解性プラスチックの合成のほか、廃棄されているワカメ未利用部位の有効活用も目指しており、実用化に向けた検討を進めている。

 

 ワカメ未利用部位の活用にも

 

 生分解性プラスチックは微生物に分解され、最終的に水と二酸化炭素となる性質があり、環境負荷の小さいプラスチックとして注目を集めている。
 その一種であるPHAは、バイオマス由来の糖や油を添加した際、細胞内にエネルギー源として蓄積される物質で、化学制御によって、硬軟多様な性質を示すという。
 山田准教授は、生産量全国一を誇る岩手のワカメに着目。県内では毎年約5500㌧ものワカメが廃棄されているとの報告もあることから、未利用部位の有効活用を目指し、海藻類に多く含まれる成分を利用したPHAを微生物合成する新たな技術構築を進めている。
 山田准教授らの応用微生物学研究室では、ゼミ生が地元住民の協力を得ながら、大船渡市末崎町の碁石海岸などで海岸に打ち上げられたワカメなどを採集。海藻に多く含まれている糖アルコールであるマンニトールをエネルギーとする「バークホルデリア属細菌」の一種を、続いて、アルギン酸で微生物合成する「コベティア属細菌」の一種を相次いで発見した。
 このうち、バークホルデリア属細菌については「大船渡湾から単離した微生物によるマンニトールを原料としたバイオプラスチックの生合成」として研究論文を発表。これが県三陸海域研究論文知事表彰で高く評価され、県知事賞に輝いた。
 また、コベティア属細菌については、PHAの多く蓄積する培養条件を検討中。アルギン酸でPHAを合成する微生物は非常に珍しいといい、特許出願中でもある。
 これらPHAの実用化に向けては、合成量の向上が今後の課題となる。例えば、バークホルデリア属細菌の場合、PHA合成量は培養液1㍑あたり0・8~0・9㌘ほどだが、実用化するには同20~30㌘が必要という。
 また、ワカメは冬季に収穫されるため、原料の供給量が時期によって偏りがあるのも課題という。山田准教授は「生産量を上げる方法をいろいろと検討していきたい。大船渡の方たちの協力と学生たちの頑張りによって、こうした微生物を発見できたのをうれしく思う。実用化という大きな目標の達成にはまだまだなので、これからも頑張りたい」と力を込める