2019陸前高田市長選/告示まで1カ月切る、新人と現職が訴え強める

 来年2月12日(火)の任期満了に伴う陸前高田市長選は、1月27日(日)の告示まで1カ月を切った。これまでに立候補を表明したのは、元県企画理事・紺野由夫氏(59)=横田町=と、3選を目指す現職の戸羽太氏(53)=高田町=の2人。ともに無所属で臨むとしており、それぞれに市内を歩き、まちづくりの施策や自身のポリシーなどについて訴えを強めている。市長選候補者説明会は1月10日(木)に市役所で行われるが、現時点では「第3の候補」擁立の動きはなく、新人と現職による一騎打ちになる可能性が高い。
 紺野氏は県立高田高校出身。中央大学卒業後、昭和58年に県奉職以来、政策地域部や保健福祉部の副部長、会計管理者、農林水産部長などの要職を歴任し、本年度は県のトップ3に位置するとされる企画理事に就いた。
 しかし今年9月、その職を辞して立候補を表明。「復興事業が終息し、税収も下がるとみられる平成32年度以降、市の財政はかなり厳しい局面を迎える。復興にかかる予算がなくなったあと、市民がどのように生計を立てていくのか。古里・陸前高田をなんとかしたいという思いから出馬を決意した」と語った。
 県幹部時代に手がけた1次産業振興策や、外部への売り込みといった手腕をPRするとともに、県や国とのパイプをフルに生かした予算獲得などに自信をのぞかせる。
 行財政運営改革も政策の一つに掲げ、「公共施設の維持管理にかかるランニングコストが市の財政を圧迫する」として、新庁舎規模の見直しについても言及。「市の総合計画や予算を伴う計画については、毎年度市が中期財政計画を策定・公表すべき」として市民のチェック体制強化策を提示する。
 また、1次産業担い手育成支援や、同市の温暖な気候を生かした作物の栽培支援などの強化を約束。地元食材を使ったメニュー開発とレストラン・ホテル等での提供など、農林水産業の魅力を観光と結びつけた「着地型観光」の推進を訴える。
 一方、現職の戸羽氏は神奈川県松田町出身、東京都立町田高卒。市議、副市長などを経て平成23年に初当選を飾り、2期8年目を迎えた。
 3選を目指すことについて初めて言及したのは、市議会9月定例会。一般質問への答弁として「個人の考えだが、引き続き市民の先頭に立ち、この復興を最後までなしとげさせてもらいたい」と語った。10月には、戸羽氏を初当選から支え続けてきた市民団体・あたらしい陸前高田市をつくる市民の声(菅野隆介会長)からの要請を受けて正式に出馬意思を固めた。
 初当選直後に発生した東日本大震災の復旧・復興とともにあった約8年間の経験と、支援をきっかけに生まれた国内外の自治体・企業・団体とのつながり、高い知名度を強みとする。
 若いころに数年間アメリカで暮らし、障害者と健常者の垣根がない社会を目の当たりにしたことが「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」を訴えるきっかけになったといい、職員研修の開催、ノーマライゼーション大使の任命、公共施設やまちなかにおけるユニバーサルデザインの徹底などに取り組んできた。
 また、自力で移動手段を持たない人が利用しやすい公共交通網の整備、地域課題解決に寄与するベンチャー企業の誘致なども施策に掲げる。同氏は1月4日(金)、高田町の「市民の声」事務所で政策について記者会見を開くとしている。
 市長選挙および、同じ日程で行われる市議会議員補欠選挙(欠員1人)の立候補予定者説明会は、1月10日に市役所4号棟第6会議室で行われる。市長選挙の説明会は午後1時から、市議補選の説明会は午後3時30分からとなっている。