2019陸前高田市長選/告示まで2週間、新人・現職の争い確実か

 任期満了に伴う陸前高田市長選の告示まで、残り2週間となった。立候補を予定しているのは、正式表明順に新人で元県企画理事の

(59)=横田町・無所属=と現職で3選を目指す戸羽太氏(54)=高田町・同=の2人。今のところほかに出馬の動きはなく、両氏の争いとなることが確実な情勢。市の行財政運営などに疑問を持つ層への浸透を目指す紺野氏に対し、1期、2期目に進めた復興事業と各種施策を基盤としたさらなる発展を訴える戸羽氏が対決姿勢を強めている。前哨戦も終盤を迎え、19日(土)には紺野氏、20日(日)には戸羽氏の陣営が決起大会を開く。

 

 対決姿勢強める両陣営、近く相次いで決起大会

 

戸羽太氏

紺野由夫氏

 2月11日(月)の任期満了に伴う今市長選は、昭和30年の市制施行から通算17回目、東日本大震災後は2回目。27日(日)告示、2月3日(日)投開票の日程で行われる。
 10日に市役所で開かれた立候補予定者説明会には、紺野、戸羽両陣営以外の姿はなく、平成27年の前回選と同様、新人と現職による一騎打ちとなることが確実視される。
 紺野氏は昨年11月に事務所開きを行い、同12月には支援団体「明日のたかたを拓く市民の会」(村上研一会長)が政策発表会を開催。紺野氏が新人とあって、「政策や人柄を知りたい」という市民を含む約450人を前に、「働く場の創出」「安心して子どもを産み育てられる環境づくり」「福祉」「教育」「行・財政改革」の5項目に関して具体的な施策を示した。
 行財政改革において紺野氏は、市役所新庁舎が7階建てで計画されていることについて「身の丈に合っていない。自分が歩いて耳にする中では反対する市民が多い」と指摘。
 「今後の人口減少、税収減少を考えればもっと小さくてもいい。維持管理費が大きく財政を圧迫し、ほかの市民サービスが手薄になる。自分が市長になったら規模の見直しを図る」と訴え、一つの争点とする構えを見せる。 
 一方で紺野氏は「一番の基本であり重視するのは、税収を上げるための産業振興」とし、県農林水産部長時代の実績を踏まえた地場産品のブランド化とトップセールス、滞在型観光の推進による地域経済の活性化などを掲げる。
 地域を隅々まで歩いているほか、各地の公民館単位などでミニ集会を開催。9日には市コミュニティホールで対話集会を開いて参加者から意見・質問を受け付けるなど、「直に話を聞いて施策に反映するという姿勢を示したい」とする。
 また、公式サイトのほか、ツイッターやフェイスブックといったSNS、選挙ドットコムにもページを開設し、政策や日々の活動、素顔の人柄なども発信。インターネット上からも認知度向上に努め、市民への浸透を図る。
 現職の戸羽氏は昨年10月、市民団体「あたらしい陸前高田市をつくる市民の声」(菅野隆介会長)の要請を受けて正式に出馬表明。後援会事務所開きにあたる集会を同12月に開き、支援者ら約320人が集まった。
 集会では来賓の戸田公明大船渡市長、黄川田徹元衆議院議員、岩脇洋一県信漁連会長らが支持を表明。昨年11月の大船渡市長選において3期目の当選を果たした戸田市長は、「復興の総仕上げの時期に市長を変える選択肢があってはならない。今までのいきさつを知る現職に舵取りを任せるべき」と述べた。
 戸羽氏は「市の復興計画で定めた8年間ですべて成し遂げられなかったことをおわびする。しかし、すでに着手している新しい施策もあり、私にこれらをやり遂げさせてほしい」と〝継続〟への支持を訴える。
 ハード整備が終盤を迎える中、今後はソフトの充実を重視する。中でも「持続可能な地域公共交通の整備が課題」という認識を示し、企業誘致を進めるにあたっても「こうした地域課題を解決してくれるようなベンチャー企業などを招きたい」とする。
 また、新しい産業の形として、民間企業や大学などとの協働によるピーカンナッツの苗木栽培、陸上養殖などを挙げる。
 7階建て新庁舎については、災害復旧事業が「原形復旧」を原則としていることを踏まえ、「震災前の庁舎面積と同じ規模であり、決して華美なものにはなっていない」としている。
 高い知名度があり、前回選における前哨戦でも、任期中も重視してきた住民との「語る会」を各地で開くことによって、さらに認知を広げる。
 両氏とも政党の支持は受けないとしており、党派性によらない支持拡大に取り組んでいるが、2週間後に突入する選挙戦に向けては、動向が読みにくい若年層へのPR、選挙に関心が薄い有権者の投票行動を刺激するような政策の浸透をいかに図っていくかがカギとなる。
 また、23日(水)には陸前高田青年会議所が主催し、震災後初となる候補予定者同士の公開討論会が市コミュニティホールで開かれる。紺野氏と戸羽氏が登壇し、事前に市民から寄せられた質問などに答えながら、それぞれの政策や互いの立ち位置の違いなどについて明確にする。
 昨年12月3日現在の同市の有権者数は、1万6821人(男8137人、女8684人)。前回選投票時の1万7164人(20歳以上)と比べると343人少ない。