途絶えた小正月行事再現、赤崎町蛸ノ浦の住民ら/大船渡(動画、別写真あり)
平成31年1月15日付 7面
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かつて大船渡市赤崎町の蛸ノ浦地区などで行われていた小正月行事を再現し、次世代につないでいこうという伝承再現行事「みんなで楽しむ小正月行事」が14日、同地区公民館(志田安雄館長)で開かれた。「あわぼう」や「なまこ引き」など豊かな実りへの願いが込められた地域行事を地域住民らが体験し、祖先に思いをはせた。
「あわぼう」や「なまこ引き」、記録残し 次世代へ
この催しは、今では見る機会が少なくなったり、途絶えてしまった行事などを調査している蛸ノ浦地区の昔を語る会(崎山陽一会長)が、蛸ノ浦老人クラブ・尾崎会(同会長)と同公民館との共催で実施したもの。途絶えてしまった行事を再現し、記録に残すことで、次世代に継承していこうと企画された。
地域住民ら約30人が参加し、みずき団子のほか、ホオノキなどの幹を花形に削ってクリや竹の枝に刺す「あわぼう」、ハギの枝に小さな餅を飾る「もち花」、コブの木とササをわらで束ねて長屋などの戸口の軒に飾る「笹とこぶの木」の製作に励んだ。
このあと、農地を荒らすモグラの被害防止を願って行われたという「なまこ引き」を実施。なまこ引きは、わらで編んだ袋にナマコを入れて家の周りを3周するもの。「やらぐろう とんぶくろ ソバの皮も ほんがほがー」などと歌い、そば殻やもみ殻、まめ殻をまきながら行うという。かつては同町の清水地域で行われていたが、戦後に途絶えてしまったという。
今回は、志田館長や地域住民が歌いながら、そば殻などをまき、地域の親子がナマコを引いて、同公民館の敷地を3周。ほぼ全員が初めて見るという地域の〝奇習〟を、参加者らが興味深そうに眺めていた。
崎山会長(78)は「(催しは)昔を語る会の成果を発表する場でもあるが、伝承を再現することによって、記録を保存したかった。なまこ引きの歌詞には、意味が分からない単語がある。三陸町や遠野市にも同様の風習があると聞いているので、そうした地域とのつながりができて、歌にどんな意味が込められているか知ることができれば」と話していた。
催しに参加した鳥沢冨雄さん(85)は「子どものころは、1月8日に『山入り』といって、小正月行事に使う木を山へ切りに行ったもの。あわぼうなどは初めてという住民も多いが、自分にとっては懐かしい」と笑顔だった。