木造仮設の絆これからも、入居者らが「同窓交流会」/陸前高田(別写真あり)

▲ 笑顔で再会を喜び合う出席者

住田での生活振り返り感謝


 東日本大震災を受け、住田町が独自に整備した木造仮設住宅の入居者らが集う「同窓交流会」は14日、陸前高田市高田町のキャピタルホテル1000で開かれた。同市などで暮らすかつての住民や現入居者、仮設住宅を支援してきた町関係者が出席。町内最大規模の団地だった下有住・中上の自治会が同日で解散となるなど、発災から8年が近づき入居者はわずかとなったが、参加者は木造仮設住宅ではぐくんだ絆を今後も大切にする思いを確認し合った。

 

自治会解散も報告


 町は発災後、町営住宅跡地の火石(世田米)に13戸、旧幼稚園用地の本町(同)に17戸、旧下有住小学校グラウンドの中上(下有住)に63戸を建築。平成23年5月の完成当時は、3団地で気仙両市での被災者ら計261人が暮らした。
 入居者減少や道路整備などに伴い、火石は全戸、中上も一部を撤去。町によると、現在、被災者の入居は本町が6世帯19人、中上が12世帯24人と、ピーク時の2割弱となっている。町は昨年、木造仮設住宅の利用期限を原則来年3月末までとする方針を示した。
 中上団地に隣接する下有住地区公民館や、仮設住宅支援を展開している邑サポートなどは、一緒に過ごした人々が集まり、なごやかに語らう場を設けようと、一昨年、昨年に続いて企画。木造仮設住宅で暮らした被災者や町関係者約40人が出席した。
 同館の金野純一館長は「きょうは、いちばんつらい時に一緒にいたなと思い出しながら、楽しく過ごしてほしい」とあいさつ。乾杯後のスピーチでは、邑サポートの奈良朋彦代表理事が「家族のようなお付き合いをさせていただいた。最後の入居者が退去するまで、活動を続けていきたいと思う」と語った。
 懇談に入ると、参加者は顔なじみを見つけては声をかけ、近況を伝え合った。社協や邑サポートなど支援者とも気さくに会話を交わし、心を通わせた入居当時の思い出を振り返った。
 陸前高田市気仙町で被災した菊池秀也さん(79)は一関市内での避難生活などを経て、中上の完成直後から暮らし、2年6カ月間入居。「最初は誰も知っている人がいないから不安だったが、今思うと楽しい思い出ばかり。何もかも流されてしまった人たちの集まりで、家の外に出て気兼ねなく入居者と会話ができたりして、つらいと思ったことはなかった」と、笑顔で振り返った。
 また、会場では、同日で中上団地の自治会が解散したことを報告。現入居者の了解を得て、自治会運営の残金は、今回の同窓交流会費用の一部に充てられた。本町の自治会もすでに解散している。
 これまで中上の自治会長を務めてきた柳下八七さん(68)は、今月中にも退去する計画。再建した気仙町の住宅に移る。
 スピーチでは感謝を込めながら「中上は、陸前高田市内の各町から被災者が来て、大船渡市や大槌町からの住人もいた。運営では難しさもあったが、町や下有住の皆さん、社会福祉協議会、邑サポートのおかげでやってこられた。数え切れないほどお世話になった。これからはかつての入居者がこういった会を企画し、住田の皆さんを招待できれば」と話していた。