新校舎に期待わくわく、震災で被災した気仙小が高台に新築/陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 新たな校舎が完成し、笑顔で帰途に就く児童

 東日本大震災の津波で陸前高田市気仙町の校舎が被災し、同町今泉地区の高台に移転新築した気仙小学校(金野美惠子校長、児童55人)の新校舎落成式は18日、現地で開かれた。関係者は震災で壊滅的被害を受けた同地区の復興のシンボルとなる同校の完成を喜び合い、児童たちは木のぬくもりに包まれた新たな学びやで3学期をスタートさせた。

 

復興の象徴落成を喜び合う

 

旧気仙中卒業生が寄贈した看板の除幕式も

 3学期始業式後に行われた落成式には、全校児童や市、来賓、地域住民ら合わせて約130人が出席。
 戸羽太市長は「児童にはさらに勉強に励み、本市の将来を担うべく、その基礎を養ってほしい」と式辞を述べた。
 施工者への感謝状贈呈、金野校長のあいさつなどに続いて、児童会長の鈴木愛弓さん(6年)は「わくわくした気持ちでいっぱい。全校で何事にもチャレンジし、太陽のように明るく元気に輝く学校をつくっていきたい。たくさんの人たちの心のこもった新校舎を大切に使っていく」と感謝を伝えた。
 震災の津波で全壊した気仙小は、平成23年4月から旧長部小校舎を間借りし、両校の児童が合同で学校生活を送った。両校は25年4月に統合し、新生・気仙小が誕生。校舎は、そのまま旧長部小校舎を利用してきた。
 新校舎は29年7月に着工。施工は同市の㈱佐武建設、設計は綾井・土屋・IEE設計共同体が請け負った。総事業費は約23億円。工事は昨年12月に完了し、冬休み中に同校PTAによる備品の搬入作業が行われた。
 敷地面積は1万9416平方㍍。校舎は木造2階建てで、延べ床面積は2709平方㍍。体育館などを含め、地元産材をふんだんに使った。建物はいずれも切妻屋根を採用し、気仙地方のたたずまいを感じさせる統一感ある外観に仕上げ、施設が一つの街並みとなるよう設計した。
 音楽室や家庭科室など校舎1階中央の特別教室エリアは、天井をむき出しにするなど開放的な空間に。図書室天井部には、昨年度の卒業生13人がメッセージを書き込んだ長さ13㍍、幅1㍍20㌢の梁(はり)1本も使用された。
 敷地北東側の体育館からつながる「風のホール」は平屋建てで、広さは204平方㍍。地域住民らが利用し交流する〝開かれた施設〟と位置づけ、同校が伝統として引き継ぐ郷土芸能の練習場所としても活用する。
 この日は落成式に先立ち、校名を記した木製看板の除幕式も開かれた。
 看板は、昭和46年3月に旧気仙中学校を卒業した同級生らが寄贈したもので、昇降口付近に設置。震災で被災した高田松原のマツを使い、大きさは高さ約2㍍、幅約30㌢。校名は今泉地区出身の書家・伊藤沙舟氏が揮毫(きごう)した。
 寄贈者代表の須賀佐重喜さん(63)は「児童には立派な校舎に元気に通い、郷土を愛する気持ちを育んでほしい」と期待を込めた。