伝統守り「見っさいな」 、世田米で無火災祈願の奇習「水しぎ」/住田(動画、別写真あり)

▲ 古き良きたたずまいが残る世田米商店街沿いで無火災を祈願する道化姿の団員たち

 住田町世田米の「下町消防」(1分団1部・泉田和広部長、同4部・荻原洋正部長)による火伏せの奇習「水しぎ」は20日、曙地域を中心に行われた。消防団員が道化姿に扮(ふん)し、各戸を回ってはやし立て、無火災を祈願。地域に活気を呼び込み、防火の心意気を示した。愛宕地域の水しぎは、24日(木)に行われる。

 

24日にはコンテストも

 

 水しぎは、世田米が宿場町として栄えていた約200年前から伝わるとされる。偶然ボヤを見つけた通りすがりの物乞いが鍋釜をたたいて知らせ、大火を免れたのが由来で、語源は「水注ぎ」「水祝儀」がなまったものという。
 本来は1月24日に行われるが、下町消防では毎年直近の日曜日に実施。曙公民館では早朝から、団員ら約10人が女性地域住民の手助けを受けながらメークや着付けに臨んだ。
 着崩した和服姿で白塗りや墨汁などを顔に塗った団員たちは、商店街沿いの民家や店舗など約250軒を訪問。「見っさいな、見っさいな。一に俵を踏んまえて、二でニッコリ笑って…」などと声を上げ、一斗缶やバケツをガンガンと打ち響かせた。
 商店街沿いは築100年以上の古民家や蔵をはじめ建物が密集しているが、長らく火災は出ていない。荻原部長(51)は伝統を継承する大切さをかみしめる一方で、「1分団としてみれば、昨年大きな火災があった。やはり『火の用心』を徹底しなければ」と気を引き締めていた。
 今年初めて参加した紺野一博さん(36)は「昨年住み始め、こうした風習があることを最近知った。地域の皆さんとふれあえるいい機会だと思う」と話していた。
 24日には愛宕地域で行われ、合わせて実行委による「水しぎっぺコンテスト」も開催。今年の水しぎにふさわしい道化者を選ぶ仮装イベントで、誰でも参加できる。
 参加希望者は事務局に申し込み、当日午前10時に愛宕地区公民館に集合を。申し込み、問い合わせは事務局の多田さん(℡090・4884・0214)へ。
 同日は、まち家世田米駅で田頭真理子さんの写真展「水しぎとすみたの彩り展」(邑サポート主催)も開かれる。開催は午前10時~午後4時30分で、会場は蔵ギャラリー。コンテストが行われる同3時ごろからは、屋外でも展示する。問い合わせは邑サポート(℡090・6028・8923)まで。