地域創造学で国際理解、中学校で在住外国人ら招き授業/住田町内(別写真あり)

▲ なごやかな雰囲気の中で行われたベトナム分科会の授業

 住田町内の中学校で23日、町内などで暮らす外国人を招いた「地域創造学授業」が行われた。ベトナム、中国、アメリカ各国の出身者は、日本で住むようになったきっかけや母国の良さ、どのようにして日本語を習得したかなどを紹介。生徒たちは、地元の事業所にかかわる〝身近な〟外国人に理解を深めながら地域社会の現状を学ぶとともに、国際化時代に生きる意識を高めた。
 地域創造学は、文部科学省から研究開発学校指定を受け、町内の小中高校が実践している新設教科。町内には中国やベトナムなど外国籍の住民が約80人暮らし、中学生にとっても地域内で見かけるといった機会が多い中、新たな学びを進める中で人間関係形成や社会的実践力の向上などにつなげようと、カリキュラムを組んだ。
 講師として招かれたのは、住田フーズ㈱の技能実習生でベトナム出身のグェン・ティ・フォンさん(25)と、盛岡市在住で実習生らの通訳などの仕事にかかわる同国出身のグェン・ヴァン・カンさん(27)、けせんプレカット事業協同組合勤務で中国出身の温秀輝さん(40)、前町教委国際教育教師でアメリカ出身の佐々木テリーサさん(35)の4人。
 世田米中学校(佐藤智一校長、生徒63人)では、生徒全員が4人の講師を出迎えたあと、アメリカ、中国、ベトナムの各分科会に分かれて授業。各国出身の講師が生徒たちの質問に答え、外国人としての苦労や日本の良さなどを伝えた。
 ベトナム分科会で教壇に立ったフォンさんは、技能実習生として間もなく3年を迎える。住田フーズで食肉加工などの作業にかかわる同国出身実習生は現在48人いるといい、多くは町内でのクッブ大会や産業まつりにも積極的に参加し、住民らと交流を深めている。
 「日本に来ていちばん苦労したのは」との問いに「日本語」と答えたフォンさん。動画投稿サイト「ユーチューブ」を使って会話を覚えたり、漢字などは「書き方」の練習を重ねるなど、生活や文化になじむための努力を明かした。
 カンさんは、母国で人気を集めているアーティストや、簡単なあいさつなどで使うベトナム語を紹介。授業を終えると「元気で素直な生徒と交流できて楽しかった」と、笑顔を見せた。
 一方、来日から10年以上が経過した温さんと佐々木さんは、食生活や教育環境の違いなどを解説。生徒たちは盛んにメモをとりながら、町内でも日々国際化が進む現状を感じ取った。
 分科会後の全体会では、全校生徒が感謝を込め、英語詞も織り交ぜた町民歌を斉唱。ベトナム分科会に参加した3年生の佐々木玲奈さん(15)は「ベトナムのきれいな景色や、伝統的な楽器について学ぶことができた。もっと調べて、大人になったら行ってみたい」と話していた。
 地域創造学の授業では今後、講師らとの交流で得た気づきなどを生徒間で共有する方針。そのうえで「国際社会に大切なことは」「自分たちのあるべき行動は」などについて考え、よりよい地域づくりにつながるアイデアを探ることにしている。