2019陸前高田市長選/ビジョンや政策訴える、立候補予定2氏が公開討論

 ㈳陸前高田青年会議所(村上英将理事長)は23日夜、27日(日)に告示される陸前高田市長選の立候補予定者公開討論会を高田町の市コミュニティホールで開いた。立候補を正式表明した順に、新人で元県企画理事の紺野由夫氏(59)=横田町・無所属=と、現職で3選を目指す戸羽太氏(54)=高田町・同=の2人が登壇。市政運営をめぐって、紺野氏は「復興財源に依存してきた財政は2年後に危機的状況を迎える。公共施設など事業見直しに取り組まねば」としたのに対し、戸羽氏は「まだ復興は終わっておらず、今後形になっていくものもある。さまざまなつながりから生まれた取り組みを引き続き担わせてほしい」などと語った。
 討論会は立候補予定者の考えを有権者に広く知ってもらう機会にしようと企画されたもので、市民ら約300人が集まった。
 ㈳花巻青年会議所の木村直樹氏がコーディネーターを務めた討論会は、事前に市民から寄せられた候補予定者への質問に、両氏が交互に回答する形式で進行。
 「行財政運営の課題と解決策」について、紺野氏は「復興事業の収束による税収減、市民税、普通交付税の減が見込まれ、歳入が減少する半面、公共施設の維持管理費の増加などで歳出が増加し、復興期間終了後の行政サービスの維持が危ぶまれる。あらゆる手立てを講じて産業振興を図り税収を増やさねば。着工されていない公共施設の見直し、不要不急の事業の見直しなど、徹底的な行財政改革に取り組む」と強調した。
 戸羽氏は「財政指標は県下33の市町村のうち17番目であり、悲観的な状況とは考えていない。一方、市民サービスを落とさず経費を削減するため、4月からは民間への包括業務委託を始めるなど、締めるところは締める。現在はふるさと納税による寄付額が4億4000万円ほどあり、被災前より使えるお金は増えているという認識。観光税収も今後伸びてくる。公共施設については、しっかり使っていただくために工夫することが重要」と語った。
 市の産業振興と雇用創出の課題については、戸羽氏が「農林水産物に付加価値をつけて海外にも売っていきたい。陸上養殖やピーカンナッツの苗木栽培など、新しい取り組みも始めているところ。新・道の駅もでき、民間企業の出資による『農業テーマパーク』の構想もあるなど、外から来る人をターゲットにした仕事も創出できる。地域課題解決にチャレンジしてくれるベンチャー企業も招きたい」などと回答。
 これに対し、紺野氏は地元のものを外で売り外貨を獲得する「地産外商」の考えや、担い手育成のための養成機関入学者への助成といった第1次産業振興の取り組みのほか、「建設業は雇用の受け皿として重要な産業。ILC本体や組み立て施設の設置、新・笹ノ田トンネルや市道整備などで公共事業の確保を図る。オリジナルメニュー開発、合宿誘致など、食とスポーツによる滞在型観光も推進していきたい」と述べた。
 相手に二つずつ質問し、回答に対する自身の考えも述べる「クロストーク」のコーナーも。戸羽氏は一つ目に「新庁舎の建設が、平成32年度までの復興創生期間を過ぎても問題ないとされる根拠は何か」と質問。紺野氏は「土地区画整理事業など復興期間内に終わらない一部事業は継続となる。それらと同様、新庁舎においても期間内に着工を図り、完成を目指す中で『延期がやむをえない』となった場合において、国に継続を求めることは通常の手続き」と答えた。
 戸羽氏はこれに対し「以前は私もそのように理解していたが、国から『そういうことではない』と訂正された。橘(慶一郎)復興副大臣、安藤(裕)復興大臣政務官、岩手復興局長にも確認した」と、32年度内に完成するよう求められていることを強調。紺野氏との認識の違いを鮮明にした。
 また、紺野氏は「地方自治において首長に求められるものは」と尋ね、戸羽氏が「議会との信頼関係を築く能力。行政が持つ情報を議会にいち早くオープンにし、ご相談することが大事だと思う」と回答。紺野氏は、「市長と議会との緊張関係を維持し、説明責任を果たすこと。生活に重要な影響を及ぼす課題については市民に聞くことが大事であり、意思を確認する仕組みである『住民投票制度』を創設する必要があると考えている」と主張した。
 会場に詰めかけた市民は、間近に迫った市長選に一票を投じる際の参考にしようと真剣な様子で聞き入っていた。