定住増へ空き家活用本格化、町が3棟をリフォーム/住田

▲ リフォーム後に定住希望者に有償で貸し出す川向地内

 住田町世田米の中心市街地で、町による定住促進空き家活用住宅の整備が本格化している。借り上げ、買い上げを行った一戸建ての計3棟で水回りや床面などのリフォームを行い、新年度から定住希望者に原則10年間貸し出す計画。総務省による過疎地域等自立活性化推進事業の交付金を生かした整備は、県内でも初めてという。町に限らず気仙では空き家の増加、定住希望者の住まい確保が重い地域課題となっており、今後の展開が注目される。

 

松ケ平地内の各戸建て住宅

新年度から希望者に貸し出し

 

 町企画財政課によると、現在は世田米川向地内の世田米小や社会体育館などに近接する木造2階建ての1棟と、満蔵寺などに近い松ケ平地内のブロック造平屋建ての1棟で工事に着手。世田米商店街沿いの1棟も、年度内の着工を計画している。
 川向の住宅は築42年が経過し、5年ほど前まで利用があった。子育て世代や3人以上家族での利用を主に想定し、ユニットバスや給湯器を入れるほか、壁紙やフローリングも張り替える。庭木を撤去し、複数台の車両を駐車可能な状態に整える。
 松ケ平の住宅は、築55年が経過。現在、和室の床部分などをはがす作業が進み、今後下水道への配管も計画。単身や夫婦といった、少人数世帯の居住を想定する。新たに台所設備や水洗トイレ、ユニットバスも確保。一部の和室は土間とし、物置など多目的に活用するスペースもつくる。
 改修事業は本年度の新規事業で、総務省の過疎地域集落再編整備事業(定住促進空き家活用事業)を活用。財源には、同事業の交付金を生かす予定で、県内では初の事例となる。
 物件は、平成27年度に実施した空き家に関する調査で「売却・賃貸希望」(26件)などと回答した中から選考。これまで町に寄せられた移住・定住希望や、町が運営する空き家バンク登録住宅の利用状況も考慮した。具体的には、水回り環境の充実や複数台の駐車スペースに加え、比較的小規模の住環境を望む声が多かったという。
 町は改修工事終了後、定住希望者に対して原則10年間有償で貸し出す計画。県外からの移住者だけでなく、結婚を機に新たな住まいに移ろうと考える地元在住の若い世代も対象とする方針で、賃貸額などを確定させた後に申し込みを受け付ける。
 空き家調査では、全体の16%にあたる約330戸で日常的に居住世帯がいない実態が判明。今後も増加が予想され、近隣住民が不安なく過ごせる住まいのあり方が重要視される。
 また、町内は民間の賃貸住宅が少ないほか不動産業者もおらず、個人同士でのやり取りにも難しさを抱える。約180戸ある町営住宅は入居者の居住年数が長く、ほとんど空きがない状況が続く。
 同課では「結婚して町内に住みたいが住居が見つからず、やむなく大船渡市など町外に暮らすケースもあると聞く。空き家の活用や人口減少対策の両面で効果を検証し、状況をみながら改修する空き家を増やすことも検討したい」としている。