蔵並み活用へ現状把握、世田米商店街沿いで1棟ずつ聞き取り調査開始/住田町(別写真あり)
平成31年2月13日付 1面
住田町世田米の世田米商店街沿いの蔵並みで12日、町の中心地域活性化基本計画に基づく蔵の聞き取り・立ち入り調査が始まった。商店街沿いには土蔵、板倉合わせて約40棟があり、委託を受けた住民団体・せたまい町歩きガイド(佐々木忍代表、会員8人)が1棟ずつ足を運び、内部の状況や公開意思の有無などを確認。町では今後、調査で明らかになった成果を生かし、古き良きたたずまいをもたらす歴史的建造物の保存・活用の検討を進めることにしている。
町は平成24年に町中心地域活性化構想をまとめ、26年に構想に基づく基本計画を策定。中心地域の空洞化・衰退が指摘される中、現存する文化・歴史的資産、景観、人材などを生かしたまちづくりを進め、町の活性化や交流人口創出などを狙いとしている。
この計画に基づき、古民家や蔵を生かした住民交流拠点施設・まち家世田米駅が28年度から供用開始。町外からも来訪客があり、町を代表するにぎわい拠点となった。
まち家世田米駅以外にも、商店街沿いの気仙川側などに築100年超の蔵が並び、その数は土倉と板倉合わせて40棟余りに及ぶ。昭和橋や気仙川の清流とともに古き良きたたずまいを形成する景観地として評価が高く、基本計画でも歴史的建造物の保存や「住んでよし訪れてよし」のまちづくりなどが盛り込まれている。
こうした町並み保存やまちづくり構想推進に向け、町では蔵の現状や住民意向などを把握しようと、調査に着手。委託したせたまい町歩きガイドは、28年6月発足で世田米地区住民を中心に構成しており、町は調査成果を生かしたガイド対応の充実にも期待を寄せる。
この日は、佐々木代表(73)らが主に昭和橋から北側に立ち並ぶ蔵で調査。築年数や内部の保管物、所有者に公開する意思があるかどうかなどを一軒ずつ確認した。
かつて精米を営んでいたという住家の蔵では、米の保存や選別などに用いられた木製道具が保管してあり、ガイドから「許可が得られれば、ぜひ案内時に見せたい」といった声も。夏は涼しく冬は暖かいといった蔵内部の機能性や、川沿いに立ち並ぶとあって屋根が強風で飛ばされないよう対策を施している現状も聞き取った。
佐々木代表は「ガイドをしていても、蔵並みへの関心が高い。住民が日々過ごす中で何気なく見ている光景に、多くの人々が感銘を受ける」と話し、世田米に広がる町並みの重要性を語る。
そのうえで「商店街沿いの案内では、あと1、2カ所ゆっくりと腰を落ち着かせて休憩できるスペースがあれば、楽にできる。そういった場所として蔵を1、2棟活用できるのであれば、ありがたい。ガイドの説明にも厚みが増す」と、将来を見据える。
町内では、商店街沿いに現存する古き良き建造物への活用に期待が高まる一方、ガイド会員が行った事前の聞き取りでは「荷物が多く入っている」「一人暮らしで心配」といった声も。住民が多く暮らす地域でもあるだけに、課題も浮かび上がる。
商店街沿いの住宅は細長い間取りで、来訪者が最奥部に構える蔵に立ち入るためには、住民理解が不可欠。「生活と活用」をどう両立させるかといった視点も重要となる。
調査活動は今月中に終了する計画。町は調査成果を精査しながら、基本計画に基づく今後の施策検討を進める。