究極の〝ローカル体験〟を、マルゴト陸前高田など3者が民泊×郷土芸能ツアー企画(動画、別写真あり)
平成31年2月16日付 1面

一般社団法人マルゴト陸前高田と、㈱岩手県北観光、みんなのしるし合同会社の3者は3月、気仙両市を旅する「いのちてんでんこツアー」を共同で実施する。一般家庭に宿泊する民泊をベースに、郷土芸能の体験と観劇、復興の現場見学などを組み合わせた内容で、1泊2日という短い期間の中でも地域住民と密接にかかわり、ローカルの魅力を濃厚に体験できる新しいツーリズムとして内外から注目を集めそうだ。
気仙両市で3月に実施
「いのちてんでんこツアー」は、陸前高田市内で民泊事業を推進するマルゴト陸前高田と、被災地応援ツアーや復興研修旅行などを手がける県北観光、「三陸国際芸術祭」の事務局を務め、芸術文化による地域振興の一翼を担うみんなのしるしが、それぞれのノウハウを持ち寄って立ち上げた旅行企画。3月2日(土)~3日(日)に定員20人、3月9日(土)~10日(日)に同40人で実施される。
ツアーでは、陸前高田市内の防潮堤や震災遺構を見学するほか、参加者が市内に残る民俗芸能「田束剣舞」「生出神楽」「生出鹿踊り」「槻沢念仏鎧剣舞」「小友権現舞」「けんか七夕」のいずれかを体験。芸能の担い手や指導者らの家に宿泊し、親睦を深める。2日目は大船渡市で、三陸国際芸術祭参加作品の舞台「アジア 神々の系譜」を鑑賞する。
ツアー実施に向け、マルゴト陸前高田では2月1日~3月15日まで、学生インターンの伊藤実紅さん(神戸大4年)、是枝美海さん(国際教養大3年)、齊藤茜さん(東洋大2年)の3人が、ツアーを広報するための動画・写真撮影、解説資料の作成などに取り組んでいる。
齊藤さんは、国内における〝異文化体験〟の一つが郷土芸能と考え、「都会の人にもぜひ関心を持ってほしい。聞くだけと体験するのとでは、受け取れるものがまったく違う」と強調。海外在住経験が長かったという是枝さんは、地域の伝統文化に関する外国人への対応が遅れていると感じ、「東北地方の外国人留学生に向けたPRを考えたい」とする。
大学入学後、ボランティアとして何度も大槌町に足を運ぶうち、同町臼澤地区の芸能「臼澤鹿子踊り」のとりことなり、自身も踊りを教わった経験がある伊藤さんは、「地域の中に入り込んで現地の人と深くかかわり、本当の地域を知ることができるのが郷土芸能。愛知に生まれ、神戸で生活しているが、あちらにはこれほど地域全体に〝おまつり〟が根づいているところはない。『とにかく来てみて!すごい体験ができるから』と言いたい」とPRする。
また、陸前高田市への移住者である佐々木裕郷さん(23)=東京都出身、立教大休学中=と、住田町在住の佐々木裕康さん(25)が昨年8月から「生出神楽」習得に励んでいることから、3人は「芸能を伝える地元の人」と「地区外から来た人」との交流についても記録。面や装束などにも関心を寄せながら、第三者の目線でツアーのだいご味を伝えようとしている。
マルゴト陸前高田の永田園佳さん(28)は、郷土芸能と民泊をテーマにしたインターンについて「人が来てくれるかどうか不安だったが、たくさんの応募があり、その中から選ばれた3人。若い人にも高い関心を持ってもらえたということはうれしい発見で、手ごたえも感じた」という。
郷土芸能は少子高齢化に伴って衰退したり、存続の危機にあるものも多い。そんな中、地元の文化に興味を寄せてもらうことや、定期的に芸能を実施する機会を設けることが、地域の再活性や住民のモチベーションアップにつながると期待される。
生出地区の菅野賀一さん(69)は「頼もしい取り組み。人口減少で伝承も大変になっている。関心を持ってもらえるのはありがたい」と語る。
永田さんは「陸前高田の民泊は今、いろんな自治体からも注目されている。郷土芸能と民泊という究極の〝ローカル体験〟を、新しいモデルとして陸前高田から発信し、外にも広げたい。これが地元の芸能の実践、伝承、継続にもつながれば」と話している。
ツアー料金は1泊2日4食付きで2万8000円。申し込み、問い合わせは岩手県北観光(℡019・641・8811、FAX019・641・8844)まで。