「支え合い交通」導入検討へ、新年度の公共交通網形成計画/陸前高田
平成31年2月21日付 1面

陸前高田市の地域公共交通会議(会長・岡本雅之副市長、委員24人)は19日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。出席した委員22人が「市公共交通網形成計画」の策定に関して協議し、路線バス等の停留所新設と移設、経路変更といった平成31年度地域公共交通運行方針案を原案通り承認。既存路線の利用推進を図るとともに、地域で支え合う新たな移動サービスの検討を開始するなど、同市における最重要課題の一つである「持続可能で、利用しやすい移動手段の確保」について新年度から本格的に模索していくこととしたほか、大船渡線BRT「今泉駅(仮称)」の設置をJR東日本に要望することを決めた。
住民共助で既存路線を補完
BRT「今泉駅」設置要望も
同会議は、交通事業者と市内各種団体、市、有識者、国、県の出先機関等で構成。地域にとって望ましい公共交通網の姿を明らかにする〝マスタープラン〟と位置付けられる「地域公共交通網形成計画」について協議する。また、人口減少と少子高齢化、利用者の減少等に伴う減便や運賃値上げなどによって公共交通の利便性が低下していることから、改善のための対策なども検討している。
31年度の同計画では、地域公共交通のあり方として、①日常生活で「頼りになる」②「地域交流」を支える③みんなで「支える」──の三つの基本方針を掲げたうえで、既存の市内公共交通の再編や路線のサービスの見直し、観光客の回遊性を高めるためのわかりやすい情報提供、できるだけ公共交通を利用するよう呼びかけていく仕組みづくり(モビリティ・マネジメント)による運営体制持続などに取り組む。
また、交通事業者の慢性的な運転手不足に対応するため、「公共交通への自動運転技術の導入」も検討。デマンド交通、タクシー助成事業といった地域の「枝線」を補完する移動手段に加え、自家用有償旅客運送事業や、カーシェア、ライドシェア(予定が合う人同士での相乗り)といった「支え合い交通」の導入についても、地域住民・地元NPOなどと新年度から協議を始め、アイデアと課題を洗い出しながら、実現性の高い事業を模索していく。
新年度の運行方針案では、「デマンド交通の増便、利用が少ない便の削減などで効率化を図る」などとし、デマンド交通と乗り合いタクシー停留所の統合や、沿線住民からの要望を踏まえた経路変更等も行う。大船渡線BRTでは、3月16日に小友─脇ノ沢間に「西下駅」が新設される。道の駅高田松原のオープンに伴う「奇跡の一本松駅」の移設(本設設置)も31年度内に行われる。
さらに、「気仙町今泉にBRTの新駅を」という気仙地区コミュニティ推進協議会などからの要望を受け、市がJRに「今泉駅(仮称)」の設置を要望することも確認。同町愛宕下地内の市道「田の浜町線」に上り線(気仙沼方面)と下り線(盛方面)にそれぞれ駅を設けるよう要望するもので、32年春ごろの営業開始を目指す。
会議では、支え合い交通に関して委員から「住民の共助型のサービスといえど、市のバックアップは重要。既存事業者との綿密な協議も欠かせない」といった意見のほか、「自動運転を開発するメーカーなどもこうした取り組みに関心を持っており、連携が考えられる。移動販売車に乗り合わせる『貨客混載』など、突拍子がないと思われるような話も検討していくことが必要だ」という提案がなされた。
会長である岡本副市長は、「32年度で国庫補助が終了したあとの事業についても見据えねばならない。既存路線の改善を図りつつ新しいチャレンジもしていかないと、公共交通網がなくなってしまうのではという危機感がある。『支え合い交通』はその挑戦の一つ。各地区の公平性の担保も図りながら、導入によって交通事業者が不利になることがないようしっかり協議し、併せて国や県に対しても規制緩和等の要望をしていく」と述べた。
市まちづくり戦略室の熊谷重昭室長は、「一部の地域では今ある公共交通路線の維持も難しくなっている。利用率を上げるための取り組みを行うととともに、地域に合った交通網の構築を検討していく必要がある。既存路線がなくなったとしても住民同士で支え合えるような仕組みについて、これから皆さんと協議していきたい」としている。