海中熟成酒のパッケージデザイン発表、4月に体験ツアー本格始動/陸前高田
平成31年3月3日付 8面

陸前高田市の広田湾内で地酒の熟成に取り組む広田湾遊漁船組合(大和田晴男会長)は2日、海中熟成酒のパッケージデザインを発表した。4月から熟成作業を目玉とする体験ツアーの受け入れを本格的に始める計画で、同市の海産物や酒の認知度向上、地域の経済活性化へ期待がかかる。
海中熟成プロジェクトは、地元の漁業者でつくる同組合と、気仙の特産品販売・PRなどを手がける同市の合同会社「ぶらり気仙」が立ち上げた。
同組合によると、海中は安定した温度や潮の流れなどによって酒の熟成を促し、まろやかな味わいになるという。
同プロジェクトは一昨年11月に始動。熟成作業を体験型観光として商品化しようと、昨春からは日本酒を海中に沈めたり、引き揚げる体験会を試験的に順次開催してきた。
熟成酒のパッケージデザイン制作は、盛岡市の合同会社・ホームシックデザイン(清水真介代表)が請け負った。2日、プロジェクトに協力する米崎町の㈲神田葡萄園(熊谷晃弘代表)で、関係者や報道向けの発表会が開かれた。
今回発表したパッケージを採用するのは、最大10カ月熟成させた500〜720㍉㍑入りの日本酒2種類。
商品が入る箱に「AGING(=熟成)STORY(エイジング・ストーリー)」と書かれたラベルが貼られ、中には熟成酒とフルカラーA3判の「カルテ」がセットで入っている。カルテは広田湾でとれる海産物などのかわいらしい絵が至る所に描かれた遊び心あふれるデザイン。「自分だけの酒」として付加価値を高められるよう、名前、年齢、酒の海中熟成開始・引き揚げ日といった情報を書き込むスペースも設けた。
同パッケージの商品は、4月から本格化する体験ツアー客らに届けられる。味の違いを確かめられるように未熟性の同じ酒、広田湾産の海産物もセットとする構想で、ツアー料金などは今月中に公表する。
この日は、昨年10月に海中に沈めた神田葡萄園製造のワインの引き揚げ会も実施。同組合は日本酒に加え、ワインを熟成させる体験ツアーも手がけることとしている。
市内では飲食店やホテル4店舗で熟成酒を提供している。同組合は来年3月末までに日本酒とワイン合わせて約1250本を海中に沈める予定。ネット上での予約販売にも対応するため、年々本数を増やしていく。
同組合事務局の鍛治川直広さん(39)は「パッケージが予想以上にいい出来栄えとなった。すでに『どうすれば熟成酒が手に入るの』などと問い合わせが多い。地元の海産物などの魅力を多くの人に知ってもらうためにも、4月のツアー開始に向けて準備を進めていく」と気を引き締める。