安倍首相「被災地の声を復興に」、震災から8年を前に気仙入り(別写真あり)

▲ 4回目の気仙入りで被災地の現状を視察し、地域住民らとも交流した安倍首相(右から4人目)=大船渡町

 安倍晋三首相は9日、気仙両市を訪れた。東日本大震災の発生から8年を迎えるのを前に、両市の復興状況を把握し、地域住民らとも交流。政府は8日、復興・創生期間(平成28~32年度)の終了とともに廃止される復興庁の後継組織を設置することを閣議決定しており、安倍首相は視察を踏まえ、「政府一丸となって対応していくための後継組織を設置し、一日も早い復興に全力を傾けていく。今後も現場主義を徹底しながら、被災地の声に耳を傾け、復興につなげていく」と決意を語った。

 

復興庁の後継組織にも言及

 

地元の子どもたちと握手を交わし、激励する安倍首相=高田町

 安倍首相は今回、三陸沿岸道路の釜石南インターチェンジ(IC)─釜石両石IC、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石ジャンクション─釜石仙人峠ICの開通式に合わせて岩手を訪問。式後、釜石市の鵜住居復興スタジアムを視察し、大船渡市、陸前高田市を巡った。
 安倍首相の気仙入りは、27年12月以来4回目。この日は、渡辺博道復興大臣、鈴木俊一衆議院議員、達増拓也知事らとともに訪れた。
 大船渡市は、大船渡町のキャッセン・モール&パティオを訪問。多くの市民らの歓迎を受けた安倍首相は、戸田公明市長、熊谷昭浩市議会議長、㈱キャッセン大船渡の臂徹取締役から復興状況などの説明を受けた。
 戸田市長は、市復興計画の進ちょく状況や、被災跡地利用、被災者の心のケアといった今後の課題を踏まえ、「復興・創生期間の終了まで残り2年となったが、復興の総仕上げをしながら、次のステージである地方創生に全力を尽くしていきたい。さまざまな課題を一つ一つ解決しながら地域経済と市民所得を押し上げ、少子化に歯止めをかけ、人口減少、高齢化に対応する地域力を高めたい」と述べ、支援の継続を求めた。
 その後、安倍首相は「菓匠 高瀬」で買い物をしたあと、竹灯りのワークショップに参加。竹灯りに大きく「夢」の文字を記し、早期復興への願いを込めた。
 指導にあたったキャッセンバンブークラブ(通称・竹部)の小泉洋部長(48)=鬼椿市民雑貨店代表=は、「バンブークラブの仲間になっていただいた」と述べ、安倍首相に竹部のオリジナル木札をプレゼント。その後、市民らと竹灯りを手に記念撮影も行い、握手を交わすなどの交流も図った。
 小泉部長は「大変緊張した。私たちから見ても、慰霊の思いと、日本の人たちに3月11日を忘れてほしくない思いが分かっていらっしゃるようだった。子どもたちにも声をかけ、優しい方だと思った」と話していた。
 陸前高田市では、高田町のりくカフェを訪問。戸羽太市長、伊藤明彦市議会議長、同カフェ理事らが対応した。
 安倍首相は、同カフェが手がける介護予防事業「スマートクラブ」などについてスタッフの説明に耳を傾け、同クラブで人気のヨガ体操を市民と一緒に体験した。
 りくカフェの鵜浦淳子理事は「とても光栄な経験となった。今後も事業を継続するため、国のサポートが必要ということも直接伝えられて良かった」と感激していた。
 戸羽市長は「震災から8年を前に、安倍首相自ら陸前高田に来ていただいたことは大変ありがたいこと」と感謝し、復興庁の後継組織設置について「市民も心強く思っている。よりよい復興を目指して頑張っていくためには、今後も国の支援が必要だ」と話していた。
 その後、安倍首相は報道陣に対し、「間もなく震災から8年。さまざまな困難があった中、懸命な努力によって、道路や鉄道が開通し、商業施設が開業した。復興が着実に進んでいる姿をこの目で確かめることができた」と所感を述べた。
 また、「心のケアなど復興・創生期間後において、しっかりと取り組んでいかなければならない。今後、政治の責任とリーダーシップのもとで、政府一丸となって対応していくための、(復興庁の)後継組織を設置し、一日も早い復興に全力を傾けていく。今後も現場主義を徹底しながら、被災地の声に耳を傾け、皆さんの声を復興につなげていきたい」と力を込めた。