「町民後見人」普及へ 講座受講者ら活用 31年度から体制整備本格化 住田町

▲ 養成講座を終え、修了証を手にした住民や福祉機関の関係者。「町民後見人」の担い手としての活動が期待される

 住田町や町社会協議会は平成31年度から、本年度開催した後見人養成講座修了者を生かした「町民後見人」活用につなげる体制整備を本格化させる。高齢化社会が進行する中、さまざまな契約手続きに対する円滑な対応や見守り充実に向け、住民や福祉機関など地域コミュニティーを生かした普及を図る。新年度は修了者へのサポートや住民啓発、社会福祉協議会内での「後見センター」設置準備などを進め、顔見知りの地域住民同士で支え合う体制を目指す。

 

高齢化の進行見据え

 

 成年後見制度は、認知症高齢者や知的障害者をはじめ判断能力が不十分で、自分一人では契約や財産の管理などが難しい住民を支援する制度。親族のほかに弁護士や司法書士などが担っているが、高齢化の進行や制度改正などに伴い、一定の知識などを身につけた住民を養成する機運が高まっている。
 同町の人口は今年1月末で5498人で、年間100人ペースで減少。一方で、65歳以上人口はほぼ横ばいであることから、高齢化率が上昇を続け、平成12年度に32・68%だったのが、43・5%となった。町内2168世帯のうち1人暮らしは400世帯を占め、高齢者の割合が増えている。
 今後は▽通帳管理や金の出し入れが難しくなってきた▽契約行為ができない▽振り込め詐欺が心配──といった悩みを抱える住民がさらに増えると予想される。
 障害者に関しても、身近な困りごと相談対応や、住環境の見守り充実などが求められる。また、後見人養成が盛んな自治体は、振り込め詐欺被害に狙われにくいといった効果もあるという。
 町では昨年度、成年後見制度普及啓発事業に取り組み、制度周知を図った。本年度は日常の金銭管理や契約対応などを支援する「町民後見人」を担う人材育成を見据えた養成講座を初めて企画した。
 昨年11月24日から始まり、1回330~390分の基本講座を全4回開催。これとは別に、町関係者を講師に招いた座学講習や地域実習、レポート提出なども行った。
 今月11日に町保健福祉センターで修了式が行われ、12人に修了証が手渡された。受講者の一人で民生児童委員の千葉直市さん(67)=下有住=は「受講して知識を深める中で、これから必要になっていくだろうと改めて感じた。後見人が熱心に取り組めるようになるためには、周囲のサポートも大切だと思う」と話していた。
 町は今後、「町民後見人名簿」を作り、意思確認が得られた修了者を登録。後見人を選任する家庭裁判所から打診があった際、この名簿をもとに推薦する。31年度は、町社協が担っている日常生活自立支援事業への支援役などを依頼することにしている。
 同事業は認知症高齢者や知的障害者をはじめ、日常生活を営むための支援事業で、預金の払い戻しや預け入れなど、生活費管理などを支える。町内では現在、10人が利用している。成年後見制度では、こうした金銭面の管理に加え、財産管理や福祉施設とのサービス契約といった分野にも関与が広がる。
 町では新年度、修了者を対象とした「フォローアップ講座」を予定。高齢化時代に対応した成年後見制度のあり方や、具体的な事例検討などを計画している。
 また、一般住民の制度理解を図る研修会も検討。社会福祉協議会では、生活上の困りごとなどに応じる総合相談や後見人の支援、法人後見を担う「後見センター」の開設に向けた準備に入る。
 町保健福祉課では「困った時に相談できる地域資源を充実させ、制度利用の選択肢を増やし、支え合う地域づくりの担い手育成を進めたい」としている。