映像展示「荒れ狂う海」完成 シアターで公開始まる 大船渡

▲ 市立博物館で新たな映像展示「荒れ狂う海」が公開

 大船渡市末崎町の市立博物館(平田功館長)の新たな映像展示「荒れ狂う海〜津波常習地・大船渡〜」が完成し、20日から公開が始まった。8年前に発生した東日本大震災の記録と教訓を後世に伝え、防災対策に役立てるツールの一つとして、市民らが撮影した映像等をもとに制作。多言語化にも対応しており、館内のシアターで観賞ができることから、多くの来館を呼びかけている。

 

市立博物館が制作、震災の記録を後世に伝える

 

 同館では震災発生後、「震災の状況を広く発信することが同館の重要な活動」として、市が撮影したり、市民から寄せられた貴重な写真や映像を資料として収集。こうした〝震災の記録〟を後世へ継承するとともに、防災対策にも役立てようと、市の事業として映像コンテンツを制作し、館内で公開することとした。
 制作と多言語化の作業は本年度行われた。事業費約1000万円は国の復興交付金を活用。震災後、市民や市内の事業所などから提供された多数の動画、写真を整理、編集し、約1年をかけて完全版(20分)と短縮版(5分)を完成させた。日本語ナレーション版のほか、英語ナレーション版、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語の字幕版も作り、世界に発信できる内容とした。
 20日は一般公開に先駆け、記者発表が行われた。平田館長は「大船渡は津波を受け入れ、教訓としてきた土地。過去の津波に習い、記憶を受け継いできた大船渡は、まさに〝津波常習地〟といえる。この映像が津波を正しく理解し、今後の防災対策や震災記憶の伝承に役立てられるよう願っている」とあいさつした。
 続いて、「荒れ狂う海」の完全版、短縮版をそれぞれ上映。映像はいずれも、「Ⅰプロローグ」「Ⅱ過去の津波の記憶」「Ⅲ東日本大震災 市内各地区での特徴」「Ⅳ総括」で構成している。
 このうち、Ⅱでは明治三陸地震津波(明治29年)、昭和三陸地震津波(昭和8年)、チリ地震津波(同35年)を振り返り、それぞれの被害や地震との関連性を解説。大きな揺れや地震そのものがなくても津波が起こりうる可能性、先人たちによる津波の教訓を後世に残す活動を紹介した。
 Ⅲでは、震災による市内各地区の被害状況とともに、地形や河川による津波の特徴を示した。防潮堤を越えて住宅地を襲う津波の様子や、川をさかのぼって内陸部にも及ぼした被害などを映像、写真とともに伝えている。
 そのうえで、「大船渡の人々は再び津波が来ることを忘れず、津波への備えを生かして、この地で暮らしてきた。海の恵みを受け、恐れを抱きながら生きてきた」と結んでいる。
 シアターではこの日から、「荒れ狂う海」の短縮版と常設展のあらましを解説する従前からのコンテンツ「大船渡 その海と大地」(6分)を常時公開。シアター入り口前のボタンから来館者が見たい映像を選び、自由に観賞できる。「荒れ狂う海」の完全版も、来館者の希望に応じて公開するという。
 また、市内小中学校には「荒れ狂う海」のDVDを近く配布予定。震災、防災学習などに役立ててもらいたいとしている。
 同館の開館時間は午前9時〜午後4時30分で、受け付けは同4時まで。月曜日は休館。問い合わせは同館(℡29・2161)へ。