全農地復旧し作付け可能に 5月までに高田沖地区など完成 気仙両市

▲ ほ場整備の工事が終盤を迎えている高田沖地区の農地

 県が東日本大震災の津波で被災した気仙両市の農地で進める復旧工事は、5月までに対象の351㌶がすべて復旧し、作付け可能となる見通しだ。被災農地の区画整理や排水対策などを行う「ほ場整備事業」を導入している陸前高田市気仙町の高田沖地区(28㌶)では工事が終盤を迎えており、震災から9度目を迎えるこの春、すべての農地で生産基盤が整うこととなる。

 

震災から9度目の春に節目

 

 本県では震災で725㌶の農地が被災。県によると、農業用施設などを合わせた被害総額は、約640億円にも及ぶ。
 このうち、気仙では大船渡市76㌶、陸前高田市380㌶の合わせて456㌶が被害を受け、復旧対象面積は351㌶となっている。
 気仙の農地復旧を担う県は早期の営農再開を目指し、国の災害査定を経た場所から順に原形復旧工事に着手。
 25年度からは原形復旧にとどまらず、まとまった被災農地の生産効率を高めるため、農地を大区画化する「ほ場整備」も導入した。
 ほ場整備では不整形で、小区画だった農地が拡大・区画整理され、農道や排水路も整備される。国の復興交付金対象事業で、気仙両市では大船渡市の吉浜(44㌶)、陸前高田市の小友(89㌶)、下矢作(20㌶)、広田(27㌶)、高田沖の5地区で採用された。
 ほ場整備事業として県内最大規模の小友地区や下矢作地区では26年春から、吉浜地区では27年春から作付けが再開。広田地区は29年春に4工区(岩倉、大祝、山田、羽根穴)の農地がすべて生産者に引き渡された。
 高田沖地区は、観光物産施設「一本松茶屋」裏などに位置。中心市街地などのかさ上げ工事で使う土砂の仮置き場となっていたため工事着手できなかったが、土砂撤去を受けて昨春着工にこぎ着けた。
 工事の進捗率は9割ほど。今後は農道の砂利敷きなどを行い、5月上旬には生産者に農地を引き渡す。
 このほか、原形復旧工事を行っている計4㌶も5月までに完了する計画。これにより気仙両市で復旧対象となった被災農地は、すべて作付け可能となる。
 県沿岸広域振興局大船渡農林振興センター農村整備室の佐藤力也農村整備課長は「ようやくすべての復旧農地で営農再開される段階までたどり着いた。生産者に利用してもらい、第1次産業の振興に寄与するものとなれば」と期待を込める。