三陸鉄道リアス線が開業 盛―久慈の163㌔一本化(別写真、動画あり)

▲ 出発式後、多くの乗客や沿線住民の〝期待〟を乗せ釜石駅を出発する記念列車

 三陸鉄道㈱(中村一郎社長、本社・宮古市)の盛─久慈区間を結ぶリアス線(全長163㌔)は、23日に開業した。同日、三鉄に移管されたJR山田線の釜石─宮古区間で記念列車が運行され、各駅でセレモニーやイベントを盛大に開催。駆けつけた多くの地域住民らが一本化された新路線開業を祝福し、三陸沿岸ににぎわいをもたらすよう期待をかけた。通常運行は24日から。

 

 

JR山田線を移管、各地で祝福のセレモニー

 

三鉄盛駅の切符売り場はリアス線仕様に変更

 23日は釜石駅のホームで出発式を開催。三鉄やJRの社員、沿線自治体関係者、記念列車の乗客らが出席し、花束贈呈やくす玉割りなどを行って開通を祝福した。
 その後、赤、青、白の〝三鉄カラー〟の車両3両と、南リアス線(盛─釜石)でおなじみのレトロ調車両1両で編成した記念列車が、宮古駅に向けて出発。ホーム周辺には多くの地域住民が駆けつけ、開業祝いの手旗を振りながら列車を見送った。
 釜石─宮古区間の各駅や駅周辺では記念イベントが催され、列車が到着すると来場者らが歓迎。宮古駅到着後は宮古市民交流センターで記念式典が開かれ、中村社長が関係者への感謝と、新しい鉄路での地域活性化への思いを伝えた。
 釜石駅付近から記念列車を見送った村上幸三郎さん(66)=釜石市甲子町=は、これまで「地方ローカル線を守る釜石市民の会」の会長としてリアス線開業を後押ししてきた。「宮古へ走る列車を見て感激した。多くの人が待っていた鉄路であり、これからも利用促進に向けて応援したい」とマイレールの再出発を喜んでいた。
 三鉄は、国鉄の地方路線から転換した全国初の第三セクター鉄道で、昭和59年4月に開業。東日本大震災では、南北両リアス線が大津波による甚大な被害を受けたが、平成26年4月に全線で運行再開した。
 一方、釜石─宮古区間は不通の状態が続いた。一時期はBRT(バス高速輸送システム)での復旧案がJRから出されていたが、沿線自治体は鉄路での復旧を強く希望。協議の結果、同年12月までに、JRが路線を復旧し三鉄に経営を移管することで双方合意に至った。
 同区間の復旧工事と並行し、三鉄では運転士の補充や新車両の導入、組織体制の一新など準備を進行。昨年3月にはリアス線の運行日を決定し、県内外で開通へ機運を盛り上げてきた。
 大船渡市盛町の盛駅近くで店舗「ちっちゃなクレープ屋さん」を営む木村由香里さん(40)は、特製の商品「三鉄クレープ」を販売し三鉄を応援している一人。「新路線開通はとてもめでたい。これからも多くの人たちを乗せて活躍してほしい」とエールを送る。
 同駅の山蔭康明駅長(54)は「準備期間はあっという間で、この日を迎えられほっとしている」としつつ、「リアス線開通以前からの厳しい経営状況はなくならない。開通はゴールではなく、勝負の始まり。安全第一に運行し、地域と連携しながら三陸全体を盛り上げていきたい」と意気込んでいた。
 24日は盛駅で記念イベントを実施。午前8時5分発の久慈行きの列車に合わせ、運転士への花束贈呈や、利用客への記念品配布などを行う。駅には誰でも入場可能。
 リアス線の時刻表は、三鉄のホームページで掲載している。
 運行状況の問い合わせは大船渡派出所(℡27・9669)へ。