高田松原の砂浜1㌔完成  県の再生工事が進ちょく 陸前高田 (「動画de気仙」にドローン撮影の動画あり)

▲ 延長1㌔の砂浜が完成した高田松原(電子新聞アーカイブ「動画de気仙」にドローン撮影した動画あり)

 

 東日本大震災津波で失われ、県による再生工事が進められている陸前高田市の高田松原の砂浜は、総延長1750㍍のうち、1000㍍が平成30年度末までに復旧した。本年度からの2年間、県は波打ち際や深さの測量、水質、水生生物のモニタリング調査を行う。高田松原一帯に整備している「津波復興祈念公園」内の新たな道の駅は今夏オープン予定。国、県、市が一体となった大規模事業が着実に進んでいる。

 

32年度まで現地測量実施へ

 

 白砂青松の名勝・高田松原は、約7万本あったとされるマツが震災の津波で「奇跡の一本松」を残して流失。約2㌔にわたって広がり、平成22年度に約17万人の海水浴客が訪れた砂浜は、地盤沈下と津波で約9割が失われた。
 国と県、市は、震災の犠牲者を追悼し、教訓を後世に伝えるため、平成32年度末までの完成を目指して高田松原の約130㌶に「津波復興祈念公園」を整備中。敷地内には、松林や砂浜、防潮堤に加え、県の震災津波伝承施設、市の物販施設などが入る道の駅、市の運動施設などを建設する計画となっている。
 かつての砂浜は、気仙川から流れる土砂によって形成されたが、自然回復には数百年を要することから、県は養浜工事を行うことを決めた。有識者らでつくる高田地区海岸養浜技術検討委の協議を踏まえて養浜基本計画をまとめ、27年から延長200㍍の試験施工が行われた。
 試験施工区間における波打ち際の測量や底質調査を経て、29年10月に砂浜をさらに800㍍延ばす工事に着手。総事業費は約38億円で、国からの復興交付金を充てた。
 工程は、砕いた石を積み上げた基礎部分の上に砂を敷いていき、両端には砂の流出を防ぐ突堤を整備するもの。突堤の長さは気仙川側が54㍍、浜田川側が89㍍。
 砂浜は厚さ1㍍、幅30~60㍍。投入した砂は約15万立方㍍で、民間会社が所有する宮城県中部の砂山などの砂を購入して確保した。津波による消失を免れた高田松原由来の700立方㍍も敷いた。
 将来的に海水浴場としての利用を想定する幅60㍍、延長700㍍の砂浜は、昨年10月に完成。その後、残る300㍍の工事を進め、今年3月、延長1000㍍が復活に至った。県は今月から32年度末まで、汀線・深浅測量、水質、水生生物の調査を行い、砂浜を維持・管理していくための基礎データを積み上げることとしている。
 一方、同公園内の新しい道の駅「高田松原」は、9月に開幕するラグビーワールドカップ日本大会前の開業を目指している。震災の教訓を国内外に伝えるとともに、三陸沿岸観光のゲートウェイとして、地域・観光情報などを発信する役割も担い、交流人口拡大の拠点として期待が集まる。
 また、マツ植栽地では今月から3年目の苗木植栽が行われる。野球場、サッカー場などの高田松原運動公園は本年度内の完成を目指し、工事が進む。
 砂浜再生工事を担当する県大船渡土木センター河川港湾課の佐藤秀三課長は「震災前のように県内外の人に足を運んでもらえるような砂浜とするためにも、しっかりと調査などに当たっていく」と気を引き締め、「震災から8年余りが経過した中、復興祈念公園内の工事も進展してきた。今後も関係機関と力を合わせて取り組んでいきたい」と話す。