読書環境の現状視察 被災地支援の出版関係者ら 図書館や高田高校訪問 陸前高田(別写真あり)

▲ 大手出版社や作家ら、本に携わる人たちが高田高校を視察

 出版関係者らで組織する「〈大震災〉出版対策本部」(常任委員長・相賀昌宏小学館社長)は6日、陸前高田市内を視察した。高田町の市立図書館や高田高校など、東日本大震災で被災後、再建された施設を訪ね、発災から8年でどこまで読書環境が回復しているかを確認したほか、今後求められるサポートなどについて探った。
 同対策本部は、平成23年の発災直後、小学館、筑摩書房、講談社の幹部3者が協議し、「出版界全体として震災復興に取り組むための組織構築が必要」と確認したことにより発足。現在は日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版クラブ、読書推進運動協議会の4団体で構成され、▽出版事業を通じた読書環境の復活▽図書販売環境の復活▽それらを通じた人々の心の復活──を目標とし、学校図書館、公立図書館などへの図書および図書カードの寄贈といった活動を展開する。
 今回は同本部が企画し8回目となる「東日本大震災を忘れないためのバススタディツアー」に委員ら35人が参加し、同市と釜石市を訪問。陸前高田では高田町のアバッセたかた内にある伊東文具店と隣接する市立図書館、高台に新築再建された高田高校を視察した。
 このうち、高田高の図書館では千葉由美子教諭(46)が発災後の同校の歩みを説明。津波で校舎が全壊し、大船渡市の空き校舎を借りて学校が再開されたものの、図書室を放棄して教室に改修せざるをえなかったこと、一方で読書環境の復活を望む声が大きかったこと、同本部をはじめとしたさまざまな機関、団体、個人からの支援を受けて図書館再生のため取り組んできたことを振り返った。
 また、公務補助の職員が熱心に図書館運営に携わっていることに触れたうえで、千葉教諭が「蔵書0冊から始まり、現在は1万7800冊まで回復した。たくさんの生徒が図書館を活用しており、県内でも本校ほど貸し出しがあるのも珍しい」と説明した。
 同本部運営委員の原本茂さん(65)=小学館監査役=は、「8年たっても『まだここまでか』という感じはするが、読書環境は着実に戻っていると感じている」と語り、高田俊哉さん(49)=筑摩書房経理部長=は「図書館が生徒たちに利用されていると聞いてうれしい」とする一方で、「思ったよりも住宅が少なく、書店にお客さんが来るだろうかという心配もある。まちの中にもっとにぎわいが生まれていけば」と願った。