木造仮設8年ぶり〝再建〟 6月から役場内で展示へ 住田

▲ 平成23年8月に六本木ヒルズで展示された木造仮設住宅。現在も部材は保管してあり、今年6月に住田で展示を計画

三陸防災復興プロジェクトの一環

 

 6月1日(土)から2カ月余にわたり気仙をはじめ県沿岸部で開催される三陸防災復興プロジェクト2019に合わせ、住田町は役場敷地内に木造仮設住宅を展示する準備を進めている。平成23年に東京都港区の六本木ヒルズアリーナで展示した部材を生かし、建設からの歩みや、各団地での交流を深めた人々・団体との再会機会などにつなげる考え。発災から8年が経過し、仮設住宅の多くが撤去された中、改めて発災以降の歩みを振り返るとともに、地域資源や地元技術を防災に生かすあり方を発信する役割を担う。

 同プロジェクトは、三陸鉄道の一貫運行、陸前高田市で整備が進められている東日本大震災津波伝承館の開館、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催など、三陸地域が今年、世界的に注目を集める年となることから、復興に取り組んでいる地域の姿を発信して震災の風化を防ぐとともに、国内外からの復興支援に対する感謝を示そうとの総合的な防災復興行事。6月1日~8月7日(水)にかけ、気仙を含む沿岸部で各種イベントが開催される。
 8年前の東日本大震災では、海に面していない住田町は大津波による直接的な被害は免れたが、甚大な被害を受けた気仙両市に隣接する自治体として積極的に後方支援活動を展開。特に、町独自整備の木造仮設住宅は、全国的にも注目を集めた。
 発災3日後には建設を決断し、町営住宅や旧幼稚園の各跡地、旧小学校の校庭を利用し3団地に計93戸を整備。火石(世田米、13戸)は4月25日、本町(同、17戸)は5月6日、中上(下有住、63戸)は同23日に完成した。
 こうした独自の取り組みに対して、整備当初から音楽家・坂本龍一さんが代表を務める森林保全団体モア・トゥリーズが支援。同団体は23年8月に、東京の六本木ヒルズアリーナで「木を知ろう。森を知ろう」を開催し、木造仮設住宅を披露した。
 この展示では、町の第三セクター・住田住宅産業㈱社員が開催前日に、くぎを使わずに建設。開催前から全国的に関心を集めて多くの来場があり、木のぬくもりや機能性を発信。町からも住民ら約20人がスタッフとして加わり、気仙の産品を販売した。
 町では三陸防災復興プロジェクトに合わせ、後方支援の足跡を後世に広く語り継いでいこうと、町内外の関係機関と連携しながら協議。六本木ヒルズで展示した部材は現在も町内に保管され、活用が可能であることから、展示に向けて準備を進める。財源には、県の地域経営推進費を活用する。
 現在、想定される課題を洗い出しながら、詳細の検討を詰めている段階。展示の場合、5月中旬以降からの作業で間に合うという。
 例年8月中旬には役場で成人式を開催しており、プロジェクト期間後も展示を続け、多くの若い世代に目にしてほしいといったアイデアもある。役場内では、震災からの歩みや住民らの交流・活動を発信する展示などにも力を入れることにしている。
 町では「木造での整備に加え、仮設住宅が〝ハブ〟となって生まれた、さまざまな人々や団体のつながりにも光を当てたい。復興支援などを通じて住田に来たたことがある人々が再び訪れ、住民との再会やさらなる交流が生まれれば」と、期待を込める。
 町内の木造仮設住宅のうち、火石は国道整備に伴い28年秋で入居が終了し、全戸を撤去。本町は建設当時のまま残り、中上は13戸が再利用などのため撤去された。