漁業の中核担う人材に いわて水産アカデミー開講 大船渡で(別写真あり)

▲ 開講式に出席した研修生たち

 漁業就労希望者が漁業の基礎を学ぶ研修の場となる「いわて水産アカデミー」が9日に開講した。同日は大船渡市三陸町越喜来の三陸公民館で開講式が開かれ、第1期生となる7人が式に臨んだ。今後、研修生たちは県内5市町村の各漁業者の下で1年間、知識や技術の習得に励み、来年度には研修先の市町村で晴れて漁業者となる。漁業就労者の減少が続く中、本県水産業の中核を担う人材となることが期待される。

 

技術・知識習得へ研修 県内外の7人が受講

 

 国の統計によると、震災前の平成20年に9948人だった県内の漁業就労者数は、震災後の25年には6289人まで減少した。
 同アカデミーは、震災で減少した漁業就労者の回復を図り、本県漁業の中核を担う人材を育成しようと、県が漁業関係団体、市町村単位の漁業就業者育成協議会などと協力して開設したもので、昨年10月にアカデミーを運営する協議会(会長・上田幹也県農林水産部長)が発足した。
 第1期生となる研修生は18歳~50歳までの7人で、現住地は気仙両市のほか一関市、洋野町、普代村、千葉県、神奈川県。
 開講式には県や市町村、漁協などから合わせて約90人が出席。はじめに、研修生を代表して岡野竜也さん(40)=大船渡市大船渡町=に達増拓也知事から研修許可証が手渡された。
 達増知事は「本県において、水産業は沿岸地域の基幹産業。震災により壊滅的な被害を受けた水産業の再生は、復興とその先の地域再生に欠かせない。しかし、就業者は減少が続き、その確保・育成が求められている。1年間、基礎や最新の知識を旺盛に学んでいただくとともに、研さんを重ね、本県漁業の中核を担う人材として活躍されることを期待したい」とあいさつ。来賓の佐々木順一県議会議長、大井誠治県漁連会長も祝辞を述べた。
 このあと、研修生を代表して藤倉結城さん=洋野町=が「これからの1年間、お互いに刺激し合い、仲間や地域と交流を深め、実りのある研修生活を送りたい。近い将来、地域漁業をけん引する担い手として貢献できるよう、知識、技術の習得に努めていきたい」と宣誓した。
 研修生たちは同日から26日まで、「集合研修」として三陸町越喜来の北里大学三陸臨海教育研究センターで漁業の基礎知識・技術などを学ぶ。
 その後、5月から来年3月までは大船渡市、陸前高田市、洋野町、釜石市、普代村の漁業者の下でそれぞれ養殖業や定置網漁の研修を受けながら実践的な知識と技術を学んでいくほか、6次産業化、ICT、漁業経営などを習得しながら、資格取得も目指す。
 上田部長は「震災からの復興と発展を担う人材育成は重要。アカデミーで知識・技術を身につけ、担い手として成長してほしい」と期待を込めた。
 大船渡市で実践研修に臨む岡野さんは、震災後にボランティアとして大船渡入りしたことがきっかけで漁業作業を手伝うようになったといい、26年ごろには大船渡市に移住。以降、昨年3月まで陸前高田市広田町で学童保育の指導員として働きながら大船渡で漁業に携わっていた。その後は漁業者に弟子入りして国の担い手育成の補助を受けており、今回のアカデミーにも参加。「学んだ技術をその後に生かしていきたい。将来的には独立できれば」と語った。
 陸前高田市の水産課に勤めている三浦淳さん(28)は、越喜来にある実家がホタテ養殖を営んでおり、幼いころから漁業が身近にあった。水産課に勤務するうちに自身も漁業の魅力を感じたことから、市職員を辞して漁業者となることを決意。陸前高田で研修を受けることとなっており、「幅広い技術や知識を身につけ、交流を広げていきたい」と意欲をみせる。