「炭窯」で交流人口拡大を 県外企業の社員研修受け入れ 住田(別写真あり)

▲ かつて整備された炭窯を生かして人材育成につながる交流機会を創出

 住田町世田米の大股地区公民館前庭(旧大股小校庭)にかつて整備された「炭窯」を生かし、交流人口拡大を目指す動きが始まった。10、11の両日、愛知県幸田町に本社があり、自動車部品製造などを手がける金星工業㈱(松本文久社長)の新入社員らが訪れ、炭となるナラ材のまき割りや、炭窯に詰め入れる作業を体験。地元内外の関係者は幅広い世代との交流機会をつくることで、地域活性化や人材育成に期待を込める。

 

大股地区で〝復活〟作業

 

 大股小学校は、少子化の影響などにより平成14年に閉校。翌年、地元組織の大股地区振興協議会が、地区民参加のもとでの地域づくりを目指す一環で、炭窯を生かした活性化策に取り組んだ。
 しかし、東日本大震災以降はほとんど活用されずにいた。こうした中、29年度に地区内で組織された地域協働組織「スマイルおおまた」の会議などの場で、交流人口拡大につながる文化資源として住民から再活用を求める声が出ていた。
 これとは別に、金星工業も住田の自然資源や歴史文化を生かした社員研修を模索。本社がある幸田町は、震災翌年の24年に住田町と「災害時における相互応援に関する協定」を締結。官民問わず交流があり、相互に行き来する関係が生まれている。
 金星工業と大股地区住民らの思いを、町内に拠点を置く一般社団法人SUMICAや一般財団法人地域人材支援財団、町などがつなぎ、炭窯の〝復活〟が実現。10日は、入社したばかりの社員6人と住民らが共同で作業した。
 社員たちは祖父世代の住民らから指示を受け、まき割りや周囲を土で固めるといった作業に従事。冬に戻ったかのような厳しい寒さとなったが、全身を使って斧を振り上げてはナラ材を切り分け、ハンマーを使って窯の中に敷き詰めるなど、額には大粒の汗を浮かべながら熱心に取り組んだ。
 作業を体験した神田真言さん(23)=愛知県蒲郡市=は「これまで炭がどうやってできるかも知らず、やったことがない作業ばかりだったが楽しい。分からないことをちゃんと聞き、幅広い世代が関わって作業をする経験は、今後につながると思う」と語り、笑顔を見せた。
 作業を通じてすっかり打ち解け、休憩時間には気さくに会話を交わす光景も。地元住民たちも、炭をエネルギーとした自給自足の生活や、震災時には大股地区がボランティア活動の拠点になった足跡などを伝え、交流を深めた。
 金星工業では早くも、来年以降の継続に意欲的。大股地区住民も、さらなる炭窯の活用に期待を込める。
 松本社長は「言われるだけでなく、自分から意見を言い、自らで考える社員を育成したいと考えている。初めての作業をする面白さや、さまざまな世代とのコミュニケーションの大切さも分かる良い機会になる。今後10年は続けたい」と話している。