福祉車両を有効活用 本年度も継続実施 住田・大股地区の買い物送迎事業

▲ 福祉車両を使った「買い物ツアー」。荷物を車内に置き、各店舗を回ることができる

 住田町大股地区の地域協働組織・スマイルおおまた大股地区振興協議会と町社会福祉協議会が昨年11月から試験実施してきた「買い物ツアー」は、利用者らの好評の声を受け、本年度も継続する。運転免許を持たないなど外出が不自由な高齢者らが対象で、デイサービス送迎の空き時間に福祉車両を確保し、地区内の自宅から商業施設までを往復する取り組み。運営側の負担を最小限に抑えた無理のない形としてだけでなく、住民の地域参画促進や地元経済活性化といった良さもあり、人口減少が進む中で注目を集めている。

 

〝空き時間〟で無理なく成果

住民の地域参画促進にも

 

 高齢化や人口減少が進行する中、住民の実情に合った公共交通や買い物環境のあり方は、気仙3市町共通の課題。一昨年9月に発足したスマイルおおまたでも、住民から最初に寄せられた困りごとの一つが、買い物場所の確保だった。
 地区内には110世帯余りが暮らし、住宅が点在。小売店は閉店が続き、徒歩圏内に店舗がない住民が増えている。また、限られた本数しかバス運行がなく、とくに免許を持たない女性高齢者らの移動手段が厳しい状況にあった。
 新たな運行サービスを立ち上げるには、設備や財源・人員確保で壁が多い。こうした中、町社協が保有し、朝や夕方を中心に使われるデイサービス送迎用の福祉車両に注目。〝休んでいる〟日中の時間に送迎利用して地域住民の移動手段確保につなげようと、昨年11月下旬から買い物ツアーが始まった。
 地区内の独居や高齢者の世帯で、買い物が困難な住民が対象。無料で利用でき、当日朝までに連絡があれば送迎する。スマイルおおまたや社協でも、この事業のための〝新規投資〟はないという。
 月2回ペースで続け、毎回2~6人が利用。当初は平成30年度までとしていたが、本年度も継続することになった。現在は、9世帯が登録している。
 本年度初開催の13日は住民2人が利用し、スマイルおおまたの事務局や社協の各職員が同行。自宅まで迎えに行き、国道107号沿いに構える量販店などを回り、飲食店での昼食も楽しんだ。
 各店舗では花苗や野菜の種、食料品などを購入。利用した遠藤孝子さん(83)は「時間に追われることなく買い物できるのがいい。困っている人はもっといると思うので、広まるのでは」と話す。
 店舗ごとに車両に荷物を積み込みできるほか、購入要望に応じて行き先を指定できる。これまでの利用では、まず理容店で住民を降ろし、他の利用者が各店舗で買い物を行ったあと、再び理容店に迎えに行くといった行程もあった。ツアーに合わせてまとめ買いする住民が多く、地元消費にもつながっている。
 スマイルおおまた事務局の紺野和美さん(34)は「数は決して多くはないが、住民の外出機会が広がったのは成果。利用者が地域のイベントにも顔を出してくれたり、身近な困りごとを相談してくれるなど、地域運営でも良い面があった」と振り返る。
 さらに「運営する側も無理がない形で行っており、それによって住民の皆さんも気兼ねなく利用できる。最近はよく『次の運行の日は決まったの』と聞かれ、楽しみにしているようだ」と語る。同組織では今後も、利用者の声に柔軟に対応しながら実情に合った運行事業を続けていくことにしている。