木村さん制作楽曲がアプリのBGMに 作曲家としても高い評価 陸前高田
平成31年4月19日付 7面

陸前高田市高田町にある「おかし工房木村屋」(木村昌之社長)4代目で、アマチュアギタリスト・作曲家の木村洋平さん(33)の楽曲が、IT企業大手・GMOインターネット㈱(本社・東京都渋谷区)が17日にリリースしたアプリのBGMとして使われている。これまでもギターを主軸としたインストゥルメンタル(器楽曲)の世界でプロからも高く評価されてきた木村さんだが、その実力がさらに広く知られることになり、地方にいながらミュージシャンとしてステップアップできることも証明している。
アマチュアギタリスト
同市気仙町出身の木村さんは、東日本大震災後に陸前高田にUターンして家業を手伝う傍ら、自身が手がけた曲を動画サイトで発信。高度な演奏技術を伴う難曲も弾きこなすだけでなく、美しくキャッチーなメロディーラインに定評があり、コアなギターファンを多数魅了する。また、その技巧と作曲センスは第一線で活躍するプロミュージシャンからも「嫉妬するほどの才能」などと手放しで称賛されている。
木村さんは過去、「YOHEI KIMURA」名義で4枚のアルバムをリリース。昨年8月に発売した最新作『DAYBREAK』は通常より弦が多い「多弦ギター」を多用した意欲作で、過去の作品よりもメタルのジャンルを意識したものになっている。このアルバムがGMO関係者の耳にとまり、初めて作曲依頼を受けた。
木村さんが手がけたのは、ゲームを楽しみながら仮想通貨「ビットコイン」を管理・送金できる同社のアプリ「アカシックウォレット」のBGM。アプリ操作時の背景に流れる音楽3曲と、効果音をすべて担当した。さらに、これを契機にほかのアプリやスマートフォンで遊べるゲームの楽曲といった仕事も舞い込んでおり、今後はスマホのリズムゲーム内で木村さんの曲が使われる予定もある。
中学時代にギターを始め、社会人になってからも仕事をしながら音楽に携わり続けてきた。「種まきに時間はかかったけれど、長く続けてきたこと、自分の好きなものをひたすら貫いてきたことが、結果に結びついているのだなと思う」と語る。
自身は、「バンドを組んだり、ライブを積極的にやるといったことが苦手」という木村さん。かつてはミュージシャンとして周知されるためには、ライブを重ね、CDを売るなどして耳目を集める必要があったが、現代ではインターネットを介して誰でも世界中に作品を発信できるようになった。「家で一人、黙々と曲を作っている自分のようなタイプでも、音楽を知ってもらえる。〝時代の恩恵〟を受けている」という。
アプリの仕事を受けたことで作曲面で大いに勉強になったという木村さん。自分の中になかった視点やアプローチで曲を作ったことが刺激となり、新たなアイデアもまた生まれている。
「誰もが〝クリエイター〟を目指せる時代。いいものを見つけようとアンテナを張っている人も多いし、置かれている環境とは無関係に、評価される人が評価されるようになっていると思う」と語る木村さんは、すでに次回作の構想を練るのに余念がない。