市営住宅の一部「特公賃」に 被災3県では初の導入 陸前高田

 陸前高田市は本年度、「みなし特定公共賃貸住宅(みなし特公賃)」の制度を導入し、市営の災害公営住宅9団地の一部で5月中旬から、入居者の一般公募を始める。同市内で民間の賃貸住宅が不足していることや、災害公営住宅に入居する中堅所得層(世帯の所得月額が15万8000円以上、48万7000円以下)の家賃負担が大きいことなどを受けての措置で、東日本大震災の被災地では初めてのケースとなる。子育て世代などの若年層、I・U・Jターン者の住居ニーズへの対応、中堅所得層の中でも所得が低い世帯の負担軽減などが期待されている。

 

若年層などのニーズに対応、中堅所得層の負担軽減も

 

 「みなし特定公共賃貸住宅」は、本来、住宅に困窮する低額所得者に対して供給している公営住宅の入居要件を「中堅所得層」にまで拡大した住宅のこと。市営住宅の本来の用途に支障のない場合に限り、その空き室を入居可能とする制度になっている。
 今回、同市の災害公営住宅の一部をみなし特公賃として使用するにあたっては、3月に行われた議会定例会で「市営住宅条例の一部を改正する条例」案を可決。
 昨年10月、市は災害公営住宅に被災者以外も入居できる「一般化」を開始しているが、まだ公営住宅に空き室があることや、現状では一般賃貸住宅が不足していることなどを踏まえ、公営住宅を適正に管理するための措置として導入を決めた。
 また、災害公営住宅において入居丸3年が経過すると、月額所得が15万8000円以上となる「収入超過世帯」には、近傍同種家賃に合わせた家賃割り増しや「明け渡し努力義務」が生じる。
 収入超過となる中堅所得層が3DKに入居していた場合、近傍同種家賃に合わせた家賃は入居4年目以降、一律に7万7400円まで割り増し加算されていくことになるが、この層に規定される世帯の月額所得は15万8001円〜48万7000円と開きがあり、所得が15万8001円に近い入居者ほど、家賃負担が重いことになる。みなし特公賃の導入は、こうした入居世帯の負担緩和の意味もある。
 22日に行われた市議会全員協議会では、当局が改めて導入の目的や家賃などについて説明。現時点でみなし特公賃として見込むのは、市営の災害公営住宅9団地の計40戸。すでに入居している中堅所得層22戸を除くと、新規公募するのは7団地18戸となる。高田町の下和野、小友町の西下では一般公募を行わないとした。
 議員から「今後、新規で募集するみなし特公賃の戸数を増やす考えはないか」と尋ねられた戸羽太市長は、「ニーズがあれば柔軟に対応したいと考えている。民間アパートとの兼ね合いもあり、どのぐらい応募があるかもまだ読めないところがあるので、まずは18戸から始めたい」と述べた。
 市建設課によると、5月上旬には現在、災害公営住宅に入居している対象者への説明会を開くほか、市の広報5月号で新規公募について周知。公募期間は6月上旬までを見込む。
 また、家賃は中堅所得層の収入に応じて5段階に区分。
 これにより、現状よりも最大で約2万円、平均すると8000円〜9000円程度、家賃が安くなるという。
 同課の大友真也課長は「民業圧迫にならないよう、市内の賃貸住宅等の様子も見ながら来年度以降の対応は考えていきたい。これまで平均年齢が高めだった団地にI・U・Jターン者や若年層が入居することになれば、自治会の活性化なども期待できるのでは」としている。
 みなし特公賃を導入する団地と戸数、家賃は別表の通り。