地域支える人材育成に力 独自のキャリア教育〝深化〟 高田高校(別写真あり)

▲ 高高祭に向け、地元の若手農業者の講話を受けた3年生

 陸前高田市の県立高田高校(須川和紀校長、生徒390人)が平成29年度から、総合学習の一環で取り組む独自のキャリア教育「T×ACTION(タクション)プロジェクト」。復興を目指す同市ならではのビジネスモデルを高校生の視点で考案・発表するなどしてきた現3年生による2年間の学習成果を踏まえ、本年度は1、2年生を含め全校を挙げての取り組みに深化させる。同校はプロジェクトを通じ、生徒の課題発見力・解決力、職業観を養い、同市の将来を支える人材育成を図っていく構想だ。

 

本年度から全校挙げ活動推進

 

 タクションプロジェクトに2年間取り組んできた3年生138人は本年度前期、地元の名産品を知り、魅力を発信する活動に取り組む。8月末に開かれる文化祭「高高祭」を集大成披露の場と位置づけ、模擬店メニューとして地場産品を使ったオリジナル商品をクラスごとに販売することとしている。
 22日、まずは地元で生産される農作物や生産者の思いについて理解を深めようと、学習会を開催。同市の一般社団法人・SAVE TAKATA協力のもと、地元の若手農業者でつくる「陸前高田 食と農の森」(松田俊一代表)のメンバー4人の講話を受けた。
 杉山大樹さん(45)=横田町=は、栽培を手がける作物について紹介したあと「陸前高田には知名度は低いが、魅力のある作物がたくさんある。気仙茶やヤーコンなどの歴史を調べるのも面白いと思う」とアドバイス。
 ショウガ栽培に取り組む菊地康智さん(35)=米崎町=は「自分が作ったショウガを食べて健康に、幸せになってもらえたら最高。ショウガ栽培で岩手の一番になるのが夢」と熱意を伝えた。
 生徒会長の大山浩平君(3年)は「米崎りんごをはじめ、存在は知っていても詳しいことは知らないという人は、高高生を含めて多いと思う。どんなメニューを作るかこれから考えていくが、生徒同士でよく話し合い、名産品の魅力を地域に知ってもらえるようなものを高高祭で披露したい」と意欲を見せた。
 本年度から1、2年生も同プロジェクトに加わる。同校は生徒、教職員、保護者を対象に、昨年度実施したアンケート結果などを踏まえ、プロジェクトで養いたい能力を▽計画力▽実行力▽発信力──の三つに絞り、各学年でこの三つの力を伸ばす独自のプログラムを実践する。
 具体的には、1年生は地元の企業経営者らの講演会を受けるなどしたあと、個々にビジネスモデルを考案する。2年生はグループごとにアイデアを共有し、ビジネスモデルをさらに練り上げる。いずれの学年も高高祭など外部向けに発表の場を設けることとしている。
 須川校長は「特にチャレンジする力、失敗しても粘り強く取り組む力を身につけさせたい。その力は必ず社会でいきる」と熱を込める。
 また「今の生徒たちは震災時小学校低学年で、『復興を目指す古里のために何か力になりたい』という思いをずっと持ち続けてきた。高校生となった今、その思いを具現化してほしい。古里への愛着を持ち、社会人となって陸前高田を支える人材となってもらいたい」と話す。