有効活用へ取り組み進む 浸水した被災跡地利用方針の具現化図る 大船渡

▲ 被災跡地を活用して整備され、28日にオープニングセレモニーが予定される「シーサイドパーク細浦」

広場や産業用地など整備

 

 東日本大震災の津波で浸水した被災跡地の利活用に向け、各種取り組みを進める大船渡市。震災から8年余りを経て、コミュニティ広場や産業用地などとしての整備が進み、少しずつではあるが有効活用されてきている。一方で、ようやく土地利用方針図の見直しを終え、これから具現化に向けた取り組みが本格化する地区も。市は利用方針の具現化やさらなる有効活用を図るため、情報発信などに一層力を入れていく。

 震災で甚大な被害を受けた大船渡市は、平成23年10月に策定した復興計画で市内各地区の土地利用方針図を定め、土地利用の基本的な考え方を提示。25年4月には、震災で浸水被害を受けたり、津波浸水シミュレーションで被害が予想される箇所を災害危険区域に指定し、住居用建築物などの建築を制限する条例を施行した。
 災害危険区域には、市内26地区を指定。今年3月末現在、防災集団移転促進事業(防集)による買取予定地は830筆24・7㌶で、買い取り済みは829筆24・6㌶(99・6%)。このうち、譲渡、貸し付け、事業で活用されている土地は406筆11・7㌶、公募や調整中の未利用・未活用の土地は440筆12・9㌶となっている。
 昨年9月末現在と比べると、活用されている土地は72筆1・8㌶の増。これに伴い、未利用・未活用の土地は47筆1・4㌶減少した。
 災害危険区域のうち、防集による土地の買い取りが相当規模で生じる12地区(大船渡町の地ノ森、下船渡、末崎町の細浦、小河原、泊里、碁石、赤崎町の赤崎、三陸町の綾里、同町越喜来の甫嶺、泊、浦浜、崎浜)では、地区側と協働で利用方策を検討し、地区の合意を得たうえで、土地利用方針図の改定と被災跡地土地利用実現化方策を策定している。
 30年度に土地利用方針の改定を行った赤崎では、①スポーツのまち中赤崎の実現②防災学習の場づくり③住民交流の場づくり④利用ルールに基づく買取地の活用──の方針などを策定。今後は事業実施に向け、財源や土地の確保などといった取り組みを図っていく。
 事業実施に向けた主な取り組みを見ると、細浦では昨年10月に着工したコミュニティ広場「シーサイドパーク細浦」の整備が完了。この4月から供用を開始しており、28日(日)には広場の指定管理者である細浦地区再生協議会によるオープニングセレモニーが予定されている。
 広場の敷地面積は3235平方㍍で、クローバーの緑地帯を中心に、高低差約1㍍の傾斜をつけた芝生の丘、屋根付きのあずまや、水飲み場、ベンチ、ソーラー式照明などを設けた。広場近くには毎月開催する「細浦復興朝市」の会場もあり、広場と連動して活用しながら地域活動の活発化を図る。
 小河原では、大田地内の被災跡地(面積約3・2㌶)を産業用地として活用し、民間事業者に貸し付け。30年度末には、事業者が整備したトマト栽培用の高度環境制御栽培施設が完成し、本格的な栽培に向けた準備を進めている。
 綾里では、綾里漁協北側にある港地内の被災跡地を活用した広場整備を計画。敷地面積は2434平方㍍で、設計までを終え、本年度は年度内の供用開始を目指して整備工事を行う。
 甫嶺では、鬼沢漁港から県道につながる既設道路への取り付け改良工事を実施。浦浜では2月から産業用地の整備工事を行っており、7月の完成を予定する。
 市ではこのほか、細浦、浦浜、綾里の3地区で、市有地と地権者の協力を得た周辺民有地を組み合わせて用地12区画を確保し、利用事業者を募集。市によると、引き合いはあるものの正式に利用が決まった区画はなく、今後も市ホームページなどで情報を発信していくとしている。
 また、対象となる被災跡地について、譲渡・貸付の希望者も随時募集。現在は復興工事に伴う仮設作業場、資材置き場等として貸し付けているケースが多いが、今後は復興事業の収束が見込まれることから、家庭菜園や駐車場などの利用促進に向け、地域公民館、学校などにも利用を働きかけていくとしている。
 市土地利用課は「被災跡地の利活用は、復興に向けた最重要課題でもある。今後も広く情報提供を図りながら、利活用を進めていきたい」と話している。