皇太子さまの即位喜ぶ 仮設住宅でふれあった一家 大船渡
令和元年5月1日付 7面
皇太子さまがきょう新しい天皇に即位され、「令和」時代が幕を開けた。東日本大震災発生から5カ月の平成23年8月、ご夫妻で気仙を訪問され、被災した人々を励まされた際、いたわりのお言葉をかけられた人々は当時を思い出しながら、即位を喜んでいる。
優しいお言葉 心の支え
皇太子さまと雅子さまは23年8月5日、被災者を励まされるため大船渡市を訪問された。甚大な被害を受けた大船渡町の市街地をご覧になり、大津波で全壊被害を受けた同町地ノ森のマイヤ中央店跡地では大船渡湾へと向かって黙礼された。
旧県立大船渡病院に建設された地ノ森応急仮設住宅に立ち寄られ、避難生活を余儀なくされた入居者を気遣い、「お体に気をつけて」「頑張ってください」などと、優しく声をかけられた。
当時、家族6人で同仮設に身を寄せていた同市盛町の事務職員・斎藤美百貴さん(55)と母の村上裕子さん(81)は、「とても優しい雰囲気でいらして、親しげにいたわりの言葉をかけてくださった」と振り返る。
斎藤さんは「国内外からの励ましがあり、さらには皇太子さまご夫妻がいらっしゃった。当時は、この先どうなるのかという不安を抱えていたが、大きな心の支えになった。地ノ森仮設にいた皆が同じ思いだったのでは」と語る。
浸水被害から復旧して暮らす住まいに、当時の写真を大切に飾っている。村上さんは「もし、ふたたびお目にかかることができたなら、あの時に来てくださったことが、いまでも心の支えになっていることを伝えたい」、斎藤さんは「天皇陛下と同じように、皇太子さまもわたしたち国民に寄り添っていただけるのではないかと思う」と、そこに写る温和な表情を見つめる。
村上さんは住田町生まれ。戦時中の幼かったころ、隣町の釜石市で艦砲射撃があった際、近所の人々と一緒に山へと逃げて身を隠した経験がある。
新しい時代に向けては、「穏やかな世の中であってほしい。自然災害はとめられないが、戦争やテロはないようにと祈っている」と話し、斎藤さんも「平凡でも、皆が幸せに日々を暮らせる時代であってほしいと思う」と願っている。