関係人口創出へ新機軸 起業や新規事業後押し 地域内外の人材交流目指す 住田
令和元年5月9日付 7面
住田町は本年度、関係人口創出・拡大を目指す総務省のモデル事業に採択され、都市住民らが住田への関心を醸成する取り組みを始める。初めて採択された昨年度に県外で実施した説明会などの場では、移住・定住にもつながる仕事づくりの重要性が浮き彫りに。地域に根ざした新規事業や起業を後押しするとともに、町内の既存住宅を活用した「お試しサテライトオフィス」などを設け、地域内外の人材が継続的につながる仕組みづくりを目指す。
「仕事づくり」を重視
近年、移住した「定住人口」や、観光で訪れた「交流人口」に当てはまらず、地域と多様にかかわる「関係人口」への注目度が高まっている。総務省では、持続的なつながりを持つ機会・きっかけを提供する地方自治体の取り組みをモデル事業として採択した。
住田町は昨年に続く採択で、本年度は「都市住民らの地域への関心を醸成する取り組み」に着手。都市部に拠点を置く個人や企業、団体と連携しながら、住田への関心を高める。
昨年度、季節ごとの町内の特色をまとめた冊子「すみたの今」を発行。昨年夏に下有住で行われた夕涼み会には、都市部の大学生らが運営役として訪れた。毎年1月に行われる世田米の奇習・水しぎや、今月3、4日の式年大祭にも首都圏から参加があった。
また、東京や名古屋では、住田について理解を深めてもらう説明会を開催。この中で「都市部でやっていることを生かせる仕事が、住田にはない」といった声が寄せられたという。
仕事づくりは、移住・定住の促進や若者世代の人口減少防止にもつながる。本年度は「新たに仕事を起こす」「多数の小さな仕事を組み合わせる」といったノウハウを持つ地域外人材に参画してもらうことで、新ビジネスの創出や、伝統を新たな形で継承する若者の増加を目指す。これにより、仕事を定期的に持ち込む地域外人材と、地域内人材がつながる形を描く。
計画によると、住田町とかかわりがある企業やNPOなどが「関係案内人」となり、都市住民らの関心醸成などを担う。地域産業や地域課題に関する説明会などを開催するほか、同町を拠点とする一般社団法人SUMICAが地域ツアーを企画しながら「関係人口」として住田とのつながりを生み出すことにしている。
さらに、低コストで事業を立ち上げられるよう、町内の住宅を「お試し型サテライトオフィス」として活用する方針。持続可能な取り組みになるかも検証しながら進める。
町企画財政課では「仕事づくりは、関係人口だけでなく、住んでもらうための第一歩となる。これまでの企業や団体、個人とのつながりを生かして、事業を展開したい」としている。
総務省のモデル事業では、陸前高田市も今年初めて採択された。同市出身者や復興支援に携わった者、ふるさと納税寄付者らが主な対象。陸前高田に関心や愛着を持ち、すでにネットワーク化している「陸前高田思民(しみん)」を関係人口に位置づけ、地域電力会社「陸前高田しみんエネルギー」の電力購入を通じて魅力的な地域づくりを応援する「ふるさと納電」の仕組みを構築する。
住田町の事業イメージは別掲。