「定住自立圏」を形成へ 大船渡市が今後の方向性示す まずは住田町と

▲ 定住自立圏形成までの流れ(大船渡市提供)

 大船渡市は16日に開かれた市議会全員協議会で、「定住自立圏構想にかかる取り組み等」の説明を行った。定住自立圏は一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域の定住の受け皿を形成するもので、市は気仙2市1町による検討を経て、まずは住田町と形成に向けて取り組むことを決めた。今後は、中心市宣言や住田町との定住自立圏形成協定締結、定住自立圏共生ビジョンの策定などを進めていくとしている。

 

必要な生活機能など確保

 

 定住自立圏構想は、人口減少と少子高齢化の進行が見込まれる中、地方圏で安心して暮らすことができる地域を各地に形成することで、地方圏への人の流れを創出しようと国が平成20年に推進要綱を制定。
 一定の要件を満たして「中心市宣言」を行った市と、近隣市町村が相互に役割分担し、連携・協力することにより、圏域全体として必要な生活機能等を確保し、地方圏における定住の受け皿となる定住自立圏を形成する。県内では、一関市と平泉町、奥州市・北上市と金ケ崎町および西和賀町、釜石市と大槌町が行っている。
 気仙においては30年1月、2市1町の首長が定住自立圏構想にかかる情報の共有を図り、意見を交換。想定される連携事業やメリット等の洗い出し、検討が必要との認識で一致した。
 その後、3市町の企画担当課長らで会議を重ね、首長らの意見交換で検討を要するとした事項や、今後の進め方を協議。同年10月には陸前高田市が「当面は復興事業の推進が最重要・最優先につき、復興事業の完了時点において改めて判断したい」との見解を示したが、同11月には3市町で今後の取り組みに関する方向性を確認、共有し、各市町の議会にも説明を行ってきた。
 こうした経過を踏まえ、当面は大船渡市と住田町が先行して取り組むこととし、2市1町で方向性を共有した。
 定住自立圏の形成にあたっては、まず中心市の要件を満たす市が連携する意思を有する近隣市町村の意向に十分配慮したうえで「中心市宣言書」を作成・公表しなければならない。中心市には、①人口5万人程度以上(少なくとも4万人超)②昼間人口を夜間人口で除して得た数値が1以上③三大都市圏の区域外に所在──の各要件を満たさなければならない。
 同市の人口は、27年の国勢調査で3万8058人と①の要件を満たしていない。ただし、東日本大震災の被災地に対する経過措置に準じ、22年の同調査結果が4万737人であることから、中心市を宣言できる。
 中心市宣言後は、中心市と連携する近隣市町村が1対1で「定住自立圏形成協定」を締結。締結には各自治体の議会による議決が必要となる。
 連携する具体的事項は、「集約とネットワーク」の考え方を基本に設定。▽生活機能の強化(医療、福祉、教育など)▽結びつきやネットワークの強化(地域公共交通、道路等の交通インフラ整備など)▽圏域マネジメント能力の強化(宣言中心市等における人材の育成など)──の三つの視点から、人口定住のために必要な生活機能を確保するため、視点ごとの政策分野のうち少なくとも1以上を協定に規定する必要がある。
 その後、中心市が圏域の将来像、協定に基づいて連携して推進する具体的な取り組み等を記載した「定住自立圏共生ビジョン」を策定。同ビジョンに基づいて実施する事業に要する経費には、国による特別交付税措置や、地域活性化事業債の充当などの支援が受けられる。広域によるスケールメリットを生かし、単独自治体では難しい共通課題の解決も図ることができる。
 今後は大船渡市と住田町が協議を進める。各種手続きの推進と、同ビジョンに位置付ける事業の来年度中の実施に向け、取り組んでいくとしている。
 議員からは、定住自立圏の形成を進めるべきとの観点から、「構想の趣旨からも、住田町と連携できる取り組みを行ってほしい」「地域の環境を生かしたなりわいをもとに、地域で生活する若者を増やせるよう、重点的な施策の展開を」といった意見、提言があがった。
 戸田公明市長は「定住自立圏の形成により、人口減少や少子高齢化に対応する地域力が生まれてくる。今後も広域連携の重要性を訴えていきたい」と話している。