未利用間伐材の回収促進を 住民主体で収集・運搬へ 経済循環も見据え 住田町

▲ 豊かな森林形成には欠かせない間伐作業。伐倒後の利活用充実も求められている(資料)

 

 

 

 住田町は6月から、住民参加型による間伐材をはじめとした未利用資源の回収システム構築に向けた検討を本格化させる。町内で「運び出し隊(仮称)」を立ち上げ、山林で間伐材を回収し、森林組合などに売り渡した対価として、作業に見合った金額分の地域振興券などを得る仕組みを目指す新たな取り組み。住民理解を図る講習会や制度設計を進め、来年度以降の本格開始を見据える。

 

システム構築を本格検討

 

 森林・林業のまちを掲げる同町は、これまでも再生可能エネルギーの木質バイオマス利用を進め、公共施設などにペレットストーブを普及させ、現在は町内で約160台を導入。平成29年度に策定した10年間の再生可能エネルギー活用推進計画でも、木質バイオマスエネルギーのさらなる利用推進を掲げる。
 同計画では、森林資源活用プロジェクトとして、住民参加による未利用間伐材などの収集システム構築を盛り込んでいた。本年度、一般財団法人地域活性化センターからの助成が決まり、来月からシステム構築に本格着手する。
 近年、各地に木質バイオマスを利用した発電設備が整備された一方、間伐では伐採のみを行い山林に木材を残す「切り捨て型」も多い。こうした材を回収する仕組みを整え、住民が山に入る機会を増やす狙いがある。
 また、全国的に局地的な豪雨が頻発し、水害の激甚化が危惧されている。沢や河川にかかる橋などに流木が堆積すると、甚大な被害につながる。災害防止や林地環境の保全にもつなげる考え。
 具体的には、地域住民らが主体となって「運び出し隊」を立ち上げ、地元の山林で間伐材を収集。森林組合が管理する集積場に運び込み、運搬重量に応じた地域振興券などを受け取るような形が想定される。
 間伐材は木質系燃料として生かし、地域振興券は町内の店舗・サービスで利用できる仕組みが見込まれる。一方、想定される課題として▽活動する担い手の確保▽収集から運搬までの実証▽間伐材回収に必要な技術習得▽持続可能な運営方法の検討▽運搬重量に応じた地域振興券の〝適正価格〟設定──などが考えられる。
 本年度は課題解決に向け、町や森林組合、地域住民らの連携を強め、実証試験や講師を招へいしての講習会、取り組みへの理解を図るPR活動などを展開。システム自体の本格運用は、来年度以降となる見込み。
 町では、中長期的な展望として、この仕組みを生かした森林整備に関する新たな担い手を創出したい考え。木質バイオマス資源を中心とした町レベルの「小規模経済」の形成や地域内通貨の流通に加え、熱供給を中心とする地域内エコスシステムを整備するための足がかりとしても注目される。
 事業を進める町林政課では「木質バイオマスの利活用推進による林業振興を再生可能エネルギー活用推進計画の重点施策として位置づけており、この取り組みを確立させることで地域資源を活用した地域密着型の産業育成を進めるとともに、古里の景観維持・活性化にもつなげたい」としている。
 システム化のイメージは別掲。