大雨で松日橋が〝被害〟 住民ら近く復旧作業へ 住田

▲ 河川の水位が上昇した影響で、橋板4枚のうち2枚が流された松日橋(21日午後4時20分ごろ撮影)

 気仙地方は、20日夜から21日にかけてまとまった降雨に見舞われ、降り始めからの総雨量が100㍉を超えた。この影響で、住田町下有住字高瀬地内の気仙川に架かる木製の松日橋が流された。そもそも、大雨を想定した「流れ橋」で、損傷を受けずに流れるよう先人の知恵と工夫が光る工法がとられている。住民らは大雨を受け入れ、復旧作業と伝統継承へ前を向く。

 

下有住の木製橋 流失受け入れ伝統継承を

 

 本州の広い範囲で被害が出た今回の大雨は、寒冷前線の通過に伴うもの。気仙の降水量は、大船渡が103㍉、住田が101㍉、陸前高田が84㍉。21日の午前10時~午後3時には、1時間あたりの降水量が10㍉を超える地点もあった。
 河川氾らんといった被害はなかったが、下有住では多くの人々の心を癒やす景観が消えた。松日橋は、昭和57年に発足した受益者組合(金野純一組合長)が管理。左岸側の松日、右岸側の中山の計18世帯で構成する。かつては下有住だけで七つの木橋があったというが、近年はこの地だけになった。
 金野組合長(74)によると、21日午後3時ごろまでは橋の形を保っていたが、橋板まで水位が上昇すると、倒れてしまったという。「けっこう雨が降っていたので、流されるとは思っていた。よく頑張ってくれたという感じ」と振り返る。
 橋の長さは約40㍍で、橋板の材料には町産のスギ材を活用。厚さ15㌢、幅50~60㌢、長さ11㍍の板4枚をつなぎ合わせるように架ける。「叉股(ざまざ)」と呼ばれる太い枝が二股に分かれた橋脚には、クルミやクリ材が用いられている。
 角度を調整しながら叉股を組み合わせ、橋板を乗せる構造。増水時はワイヤーロープでつながれた橋板や橋脚が流れに逆らわずに倒れ、橋の形が失われる仕組みとなっている。
 周辺には川をはさんで住居と田畑を持っている人も多く、古くから地域住民の往来を支えてきた。さらに、橋と周囲ののどかな田園風景は見る人の目をなごませ、町外の住民にも愛される。昨年、橋板を新調した際にクラウドファンディングで協力を呼びかけたところ、県内外から多くの寄付があり、目標金額を達成した。
 流失のたびに住民らが修復にあたり、昨年11月にも作業が行われた。金野組合長に落胆の様子はなく、復旧に向けて気持ちを切り替える。「自然の成り行きだから仕方ない。川の水が引くまで1~2週間はかかるだろう。水が引いたら作業に入りたい」と語る。
 人口減少や高齢化が進む中、地域住民は橋を架ける伝統技術の次世代継承にも期待を込める。今回の作業も日程が固まり次第、地域内外に周知し、協力を呼びかけることにしている。