教育行政の方向性示す 第9次教育振興基本計画 大震災後 初の策定 陸前高田

▲ 夢アリーナといった体育施設を活用したプロスポーツ・障害者スポーツの誘致、市民の健康づくり、交流人口の拡大なども計画に盛り込まれた(写真は昨年3月に行われた「車いすバスケ」体験)

 陸前高田市は、本年度から5カ年を計画期間とする「第9次市教育振興基本計画」を策定した。令和元年度を初年度とする同市の「まちづくり総合計画」における教育行政部門の具体的な内容を示すもので、将来像に掲げた「郷土で学び夢を拓く、心豊かでたくましい人づくり」を実現するため、学校、家庭、地域における子どもたちの教育から生涯学習、文化財の保護・継承、スポーツ振興に至るまで、震災後の社会情勢や環境の変化なども踏まえた取り組み内容を盛り込んだ。

 

環境の変化なども反映

 

 市は、昭和40年度に第1次教育振興基本計画を策定して以来、教育行政の方向と目標、これらを達成する総合的な施策を明らかにするため、総合計画に沿った事業等を記した同計画を5年ごとに改定。平成22年度まで第8次にわたって策定してきたが、23年度に東日本大震災が発生し、教育行政にかかる事業は市震災復興計画に組み込まれたことなどから、同年度以降は見直しが行われていなかった。
 本年度は、復興計画を引き継ぐまちづくり総合計画がスタート。これに伴い、学校関係者と教育団体、学識経験者、市職員など委員19人からなる教育振興基本計画審議会(佐藤圭子会長)が、昨年度から第9次計画策定について検討を始め、「学校教育部会」「生涯学習部会」の2分科会に分かれて協議。今年2月にパブリックコメントを行ったのち、3月の教育委員会定例会において同計画が議決された。
 第9次の教育振興計画は、総合計画に掲げられた「一人ひとりを大切にした学校教育の推進」「生きる力を真に備え、社会でたくましく生き抜いていく力を育成する」「地域の伝統や文化を大切にする」「生涯学習を推進する」といった九つの基本政策と、これにかかる28の基本施策にひもづく、具体的な取り組み内容を示したもの。
 18年に策定された第8次計画との大きな相違点は、大震災によって校舎や教育・文化施設、スポーツ施設が被災するなど、学校教育と生涯学習を取り巻く環境や社会情勢が大きく変化したことやグローバル化、技術革新などが進んだこと。
 このため、具体的な取り組み内容の中には、震災を経験した児童生徒の「心のケア」や防災教育の推進、安全な学校環境の整備、教員のICT(情報・通信技術)活用による指導力の向上、津波被災文化財の処理技術の構築といった項目を盛り込むなどした。
 市教委によると、計画には審議会委員の「地域全体で子どもを育てていくためには、家庭や周辺の住民だけでなく、NPOなどの協力も必要」といった声のほか、被災した高田松原の再生をはじめとする名勝・天然記念物の保護に関する意見も反映されているという。
 さらに、市総合交流センター・夢アリーナたかたが完成し、高田松原球場・サッカー場、野外活動センターなどが整備中であることを受け、総合計画に「スポーツによる地域活性化」にかかる内容が盛り込まれたため、教育振興計画でも市民の健康づくりや競技力の向上、生涯学習の観点から、これらに関する具体的な事業計画を記載。障害者スポーツや「eスポーツ」の誘致など、これまでにない取り組みも目立つ。
 市教委は「学校、家庭、地域、行政の4者がそれぞれの役割を担い、相互に連携しながら、目標が達成されるよう計画を推進していきたい」としている。