気仙小児童らが田植え  今泉地区の復旧田に酔仙の「多賀多」原料米 陸前高田(別写真あり)

▲ 気仙小の5年生が復旧田で田植え

 酔仙酒造㈱(金野連社長、本社・陸前高田市)は28日、陸前高田市気仙町今泉地区の水田で特別純米酒「多賀多」の原料となる米の苗植えを行った。同社の社員に加え、地元の気仙小学校(金野美惠子校長、児童52人)からは5年生8人が作業に参加。児童らは泥の感触を楽しみながら、米作りと酒造りに関する知識を地域の大人たちから教わり、仕事に対する誇りにも触れた。

 

「地域の産業」への理解も

 

「多賀多」は、平成17年の市制施行50周年に合わせて造られた特別純米酒。「地元の米と地元の水で、地元の人が造る」をコンセプトに毎年製造されている。東日本大震災後は一時製造が途絶えたが、26年3月から販売が再開された。
 この日はほ場を管理する今泉復興農事組合(菅野勝組合長)の佐藤直志さん(85)がまず、気仙小児童に米がどのようにしてできるのかや、4㌔の種もみが秋には約500㌔の稲となって収穫されることなどを説明。今泉地区の住民が誇りを持ち、復旧田で米作りに励んでいることを伝えた。
 はだしで田に入る段になると、子どもたちは最初こそ「うわあ」と叫び声を上げていたが、泥の感触がすぐ楽しくなってきた様子で、組合員らに教えられながら田植え。アメンボのようにすいすいと作業を進める子、ゆっくり丁寧に植え付ける子と、それぞれのペースで農作業体験を楽しんだ。
 中名生英菜さんは「はじめは大変だったけど、どんどんできるようになり、みんなで作業するのが楽しかった。小さいころサンダルで田んぼに落ちたことがあった時は、泥の感触がいやで泣いてしまったけれど、素足で土の中に入るとムニュッとしていて気持ちよかった」と、田植えを存分に満喫した様子だった。
 今年も例年通り、今泉の被災復旧田のうち、およそ10㌃で「ひとめぼれ」を作付け。一帯は大津波によって塩害などを受けたが、酒かすやしょうゆかすなどを肥料として数年がかりで地力を回復させ、化学肥料は使わず減農薬で米を育てている。
 気仙小児童による田植え体験は震災前から行われているといい、作業後に近くの泉増寺境内で休憩するのも毎年恒例となっている。
 この日は昨年収穫された多賀多の原料米のおにぎりがふるまわれ、子どもたちは稲が白米となること、自分たちの植えた苗がやがて酒造りに使われ、多くの人に愛される製品となることも学んだ。
 酔仙酒造の金野社長(58)は、「子どもたちが大きくなったとき、『昔あそこで田植えをしたよな』と仲間同士で振り返れるような楽しい思い出となってくれればうれしい」と話していた。
 この水田では10月下旬ごろに稲刈りが行われたあと、精米。同社は来年2月に「多賀多」の仕込みを行う。その後、上槽(しぼり)などの作業を経て3月には原酒として出荷される。